PUNPEE『MODERN TIMES』

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1st、2017年、日本・板橋
ヒップ・ホップ

生まれるべくして生まれたマスターピース

全音楽ファン待望、みたいな言い方をされてるけども、あながち間違いじゃないと思うんですよね。これほど知名度があって評価されながらアルバムを1枚もリリースしていないアーティストってなかなかいないんじゃないかな。
このぼくもずっと楽しみにしておりました。アルバム発売が延期されたのも彼らしいっちゃあ彼らしい。

でも期待の反面懸念もあって。
これまでまとまった作品を出していない(『Movie on the sunday』というミクステを2012年に発表しているけど、果たしてヘッズの何割がそれを実際に聴けただろうか)ということはつまり、他人の作品に客演で参加してきたわけで。しかもその客演の曲がどれも素晴らしいものばかりときたものだ。
いつしか「PUNPEEが参加してるんだから買いだな」「PUNPEEが参加してるんだから間違いない」というような「P印」のブランドが定着した。
曲は素晴らしいし、ミュージシャンとしてのポテンシャルも疑いようがないけれど、果たしてソロでも輝けるんだろうかみたいな雰囲気があったと思う。
「お嫁においで2015」やNORIKIYOに提供した「終わらない歌」などのリミックスワークが続いたのもあって、「なんだか突拍子もないすごいことをする人」というイメージも持たれていると思う。
でもアルバムを一枚作るとなると、これまでのプロデュースワークで生み出してきた「とびぬけて」すごい曲やリミックスで作ってきた「とびぬけて」仕掛けがすごい曲ばかりを収録するわけにもいかないわけで。
要するに、「天才シェフが作り上げた見たこともない創作料理」みたいなものばかりが出てくるコース、しかも全部メインディッシュ、みたいなちょっと空気が読めてないものを作ってくるんじゃないかみたいな心配が少しだけあったよ、ということ。

でも実際届いたアルバムはどうだったでしょうか。
前菜あり、見たこともないような創作料理あり、甘いデザートもあり、しかもそこにおふくろが作ったあくの強い味噌汁もついてる、みたいなみんなの期待を裏切りながらもみんなの想像を超えた、何よりも彼らしいアルバムが立派にできているではありませんか。
心配しただけ損です。やっぱりすごいアーティストだということを改めて示しました。

「一本の映画を見るよう」というのはよく聞くような常とう句、クリシェですがこのアルバムはまさにそれ。リリックの中にも映画のメタファーがよく出てきますし。
冒頭のナレーション「2057」~「Happy Meal」でじっくりイントロダクションをやり、「宇宙に行く」でPUNPEEワールドが開幕、「Renaissance」(やっと音源化!)のイントロのドラムからの"PPP!"でタイトルバックどーん!ってかんじ。
終わり方もきれいに「夢のつづき」から「タイムマシーンにのって」でクライマックスを迎え、「Bitch Planet」からの「Oldies」で見事に着地。エンドロールは5分、「Hero」。
映画の内容はそれこそデビューアルバムらしく「自己紹介」といったあたりか。ポップな魅力も、ちょっとひねくれたパーソナリティも、がっつりヒップ・ホップというハーコーな側面も、余すことなく凝縮。

このアルバムのバランスの良さに一役買っているのが、ゲスト陣の配置の良さだと思うんです。
何故か発売までゲストの詳細は発表されていなくて、発売後もあまりそこを明らかにするようなこともないので、彼なりのミスリードなのかとも思いますが、ゲストが多く参加してるんです、このアルバム。
特にトラックプロデュースが全曲PUNPEEじゃなかったのは驚きで、と同時に正解だなとも思いました。
特にあの海外のビートメイカーにしぶ~いゲストラッパー(何となく伏せておきます)を迎えた至極のヒップ・ホップチューン「Pride」はこのアルバムの中でも1、2を争う名曲。

そういうゲスト陣の参加があるからこそ、純PUNPEEソングである「Scenario(Film)」(これはトラックは違う人が作ってるんですが)「P.U.N.P.(Communication)」「タイムマシーンにのって」「Oldies」「Hero」というポップで甘い曲が映えるわけですよ。
ほんとに、ほめるところしかないなこのアルバムは。おい。

思えば去年の「AVALANCHE 6」で新曲として「Hero」を披露してから早1年以上。待った甲斐があった・・・。リアルタイムで立ち合えてよかった・・・。
でも彼が最後に言っているように「大事なのはここから」。途中のナレーションで言ってるように全部で3枚しかアルバムを出さない・・・なんてもったいないことしないでくださいよ、Pさん。
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