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『デトロイト』

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原題:Detroit
2017年、142分、アメリカ
監督
キャスリン・ビグロー(『ゼロ・ダーク・サーティ』『ハート・ロッカー』)
キャスト
ジョン・ボイエガ(『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』)
ウィル・ポールター(『レヴェナント:蘇えりし者』『メイズ・ランナー』)
ジャック・レイナー(『シング・ストリート 未来へのうた』)
ベン・オトゥール(『ハクソー・リッジ』)
アルジー・スミス
アンソニー・マッキー(『ハート・ロッカー』)
ジェイソン・ミッチェル(『ストレイト・アウタ・コンプトン』)
ジェイコブ・ラティモア(『素晴らしきかな、人生』)
評価
Yahoo!映画:3.81/5
Filmarks:4.0/5
IMDb:7.4/10
Rotten Tomatoes:84%

<映画について>
女性初のアカデミー賞®︎監督賞を受賞した『ハート・ロッカー』で一触即発のイラクの戦場へ、『ゼロ・ダーク・サーティ』では闇夜に包まれたビンラディンの隠れ家へと観客を引き込んだキャスリン・ビグロー監督。5年ぶりの最新作は米史上最大級の暴動<デトロイト暴動>の最中に起こった“戦慄の一夜”を描く。センセーショナルな題材選びと圧倒的なリアリティ、臨場感溢れる作風で世界を驚嘆させてきたビグロー監督が極限サスペンスの最高傑作を誕生させた。
<あらすじ>
1967年7月、暴動発生から3日目の夜、若い黒人客たちで賑わうアルジェ・モーテルに、銃声を聞いたとの通報を受けた大勢の警官と州兵が殺到した。そこで警官たちが、偶然モーテルに居合わせた若者へ暴力的な尋問を開始。やがて、それは異常な“死のゲーム”へと発展し、新たな惨劇を招き寄せていくのだった…。

壮絶なる一夜を描いた壮絶なる142分

ヒップ・ホップにはまってからというもの、否が応でもアメリカにおける人種問題について読んだり聴いたり考える機会が増えた。
しかしそれはヒップ・ホップの歴史という文脈での学びであって、恥ずかしながらヒップ・ホップ以前の出来事については不勉強だった。
この映画は1967年7月に起こったアメリカ史上最大規模の暴動「デトロイト暴動」を描いた一本だ。監督は『ハート・ロッカー』のキャスリン・ビグロー監督。

映画はアニメーションから始まる。デトロイトにおいて人種間の緊張が最大限に高まるに至った経緯を描き、「問題は、『それ』いつ、どのように起こるかということだけであった」と締めくくり、本編が始まる。
黒人ボーカルグループ「ザ・ドラマティクス」のメンバー、そして黒人でありながら暴動から焦点を守る警備員である青年ディスミュークス、黒人を逮捕することだけに熱意を燃やし、背後から無抵抗な黒人を射殺することすら躊躇しないデトロイト市警警官クラウス。この3つの勢力がこの物語の中心。

物語の中盤、ついにこの3つの勢力が一つのモーテルに会する。
きっかけは一人の青年がいたずら心で撃ったおもちゃの銃。その銃声を本物だと思った警官隊がモーテルを取り囲む。
ここから、地獄の拷問が始まる。最初からない「銃」を探す警察は、潔白な黒人たちを恐怖に追いやるある「ゲーム」を始める。

と、この先は物語の核心に触れるので伏せるが、映画の尺的にはこの拷問が始まるあたりでようやく1/3を消化する程度。
映画の真ん中50分ほどはこの究極の拷問シーンがず~っと続く。この「ヤダみ」がこの映画のキモだ。
圧倒的な不正義が眼前で繰り広げられるのを、我々観客はただただ見ることを強制される。生々しく飛び交う怒号、悲鳴、銃声、すすり泣く鳴き声。これらすべてから目をそらすことも、耳をふさぐことも許されない。まさに拷問を観客が「追体験」するつくりになっている。

監督キャスリン・ビグロー女史はこのストーリーをきわめてドキュメンタリックに描くことに専念している。
実際のニュースのフッテージや警察無線の音声などがコラージュ的に使用され、カメラワークもドラマティックさは抑え、起きていることを淡々と観客に伝えることを心がけているようだ。
この「淡々さ」が怖い。逃げる余地など一つも残されていない地獄は、淡々と描かれれば描かれるほど怖さが増す。

ここは若干のネタバレになってしまうが、この拷問のシーンが終わり、ここから逃げ出した一人の男を待っているある出来事。これが一番来る。
僕は『キャプテン・フィリップス』のラストシーンを思い出しましたね。極限の緊張状態から脱出した人間にとっては、ものすごくあたりまえの行動であってもまさに「至上の愛」(映画内で聴くことができる)に感じられるのだ。あの解放の瞬間は非常に美しかった。それに、この映画で描かれている問題の責任を「警察」という体制に丸投げするのではなく、あくまで「一個人」に負わせるというまなざしも賞賛に値する。

そしてこの映画を見たものの脳内に一番深く刻まれるであろうは、悪徳警官クラウスを演じたウィル・ポールターの壮絶な演技であろう。
ギョロっと見開いた眼には狂気が宿り、なぜかいつもニヤついている。
タバコの吸い方なんかはもう嫌悪感しか感じないくらい。禁煙しようかと思ったもん。
モーテルでの拷問シーンの中で、とてつもない事態を引き起こしてしまった同僚(ただクラウスの指示に従っただけなのに!)に対し、「落ち着け、冷静になるんだ!」と怒鳴るったりするんだけど、「それ全部お前に言いたいよ!!」ってな感じで全部がブーメランになってたりと、本当にどうしようもないくらいの悪役。
久々にここまでどうしようもない悪役が出てくる映画を見た。映画見た後こいつの顔が頭から離れないこと必至。

あとディスミュークスを演じたジョン・ボイエガ、精悍な顔つきが素晴らしい。正義感溢れるこの役にぴったりの顔。キャスティングの妙。
おもちゃの銃を売ってしまうクーパー役のジェイソン・ミッチェルは『ストレイト・アウタ・コンプトン』のイージー・E役。今回も絶妙な「危うさ」が光る好演技でした。女の子たちの前で見せる「行き過ぎたジョーク」のシーンは名演。とにかく危うい。何をしでかすかわからない感が素晴らしい。

そして音楽の使い方のうまさにも舌を巻く。
主人公が属するザ・ドラマティクスの歌の歌詞が伏線というか作品のテーマと重なって読めたりするあたり、さすが。
そしてエンドロールで流れるThe Rootsの「It Ain't Fair」で涙すること間違いなし。


そしてこの作品は、この2017年(本国では)に公開されたことの意義が大きい。
ちょうど50年経っても、この問題は未だに解決を見ない。「Black Lives Matter」を標榜した暴動は2017年も起きていた。N.E.R.D.Kendrick Lamarをゲストに迎えた「Don't Don't Do It!」で、Eminemは最新作『Revival』内の「Untouchable」で、警官による黒人差別を訴えた。
また、日本でも人種による差別は存在する。決して他人事ではない。
50年前の出来事に思いを馳せ、今後50年のことに思いを馳せる。そんな映画体験だった。
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