伊藤計劃×円城塔 『屍者の帝国』

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どこを切り取っても奥深い、幾重にも折りたたまれた怪作


ずいぶん久しぶりになる「読んだ本」のコーナーです。ずいぶん久しぶりになったのはこの本のせいです。
年明けくらいから読んでいたのですが、単純に読みにくい作品だということと忙しかったこともあり、4か月以上かかってやっと読破。すごい作品でした。

この作品は、生前伊藤計劃が書き残した文章をもとに、円城塔がその続きを書いたという作品になっていて、両者の作品が好きな私は迷わず手に取りました。
こういう形での共演というのは悲しいですが、この続きを書けたのは円城塔しかいなかったのではないかとも思います。

まずは軽いあらすじを。
19世紀末――かつてフランケンシュタイン博士が生み出した、死体より新たな生命「屍者」を生み出す技術は、博士の死後、密かに流出、全ヨーロッパに拡散し、屍者たちが最新技術として日常の労働から戦場にまで普及した世界を迎えていた。後にシャーロック・ホームズの盟友となる男、卒業を間近に控えたロンドン大学の医学生ジョン・H・ワトソンは、有能さをかわれて政府の諜報機関に勧誘されエージェントとなり、ある極秘指令が下される。世界はどこへ向かうのか? 生命とは何か? 人の意識とは何か?若きワトソンの冒険が、いま始まる。特設HPより)

まず登場人物の名前で気が付かれるとは思うのですが、この作品はパスティーシュ小説であって、多くの作品の登場人物が登場します。『シャーロック・ホームズ』シリーズ、『カラマーゾフの兄弟』など数えきれないほど。それに加えて歴史上に実在した人物も登場するので解説本などが出るとこれまた面白いかもしれませんね。

しかしこの「屍者」を労働力として使用する社会という設定の時点でもうヤバイですよね。
まさに『虐殺器官』『ハーモニー』のその先といった感じで。

それを引き受け書きつないだ円城塔も素晴らしい仕事をしています。多少読み進めづらいのはご愛嬌。
わからないまま読んでいるうちにわかってしまっている、あの不思議な感覚が味わえてよかったです。

人間の意識はどこから生まれてくるのか?というかなり根源的で哲学的な問いがこの作品の根底、というか伊藤計劃の作品の根底に横たわっていると思うのですが、その問題に対して物語の中でザ・ワンやヘルシングが(円城塔が)出した答えが実に興味深かったです。まだまだ自分の中では消化できてません。
でも伊藤計劃や円城塔の作品の奥底にある共通項がぼんやりと分かってきたような気がします。

終わり方も実に素晴らしいです。レビューの中であとがきとの関係性を書いていらっしゃる方がいて、それにもまた感動しました。いや自分で気づけって話なんですが。いや~すごすぎる。

物語を語ることの物語でもあったわけです。この本は。
また1年後くらいに読み返したいと思わせてくれた本です。

★★★★★
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