マイケル・サンデル 『これからの「正義」の話をしよう』

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早川書房、475ページ

誤解されてませんかね、この本


2010年のベストセラー。今更読みました。
ずっと哲学に興味があって、ずっと読みたいなぁと思っていた本だったので読めてよかったです。

さて、この本の感想をネットざっと見てみると、「1人を殺せば5人が助かる。あなたはその1人を殺すべきか?」のようなこの本の中で用いられている思考実験がクローズアップされている感が強いなと感じました。
宣伝文句もそこを売りにしていますし。
その思考実験の面白さにのみフォーカスしていて、この本の本当の核心を理解していないように見受けられます。
でも、あくまでこの本はサンデルの本であり、サンデルの主張がこの本の主題ですよ

確かに、その核心にたどり着くまでがだいぶ長いですし(3/4あたりからが彼の主張になっている)、非常に読むのが難しいです。
僕も100%彼の主張を理解できたかと言われれば自信はありません。
入門書だと思ってこの本を読むと、今まで全くこういう政治哲学などに興味がなかった人はつらいかもしれませんね。
だからこそこの思考実験だけにフォーカスしたマーケティングにはちょっと疑問です。

それはともかく、内容の話に移ります。
ほんと最初から7割はこれまでの「正義」史とでも言いましょうか、これまでの名だたる思想家たちの思想を紹介し、それらの思想がどのような問題によって浮き上がるのか(この部分が思考実験)、そして我々は無意識のうちにどのような思想に基づいて「正義」を判断しているのかを順を追って説明しています。

この順番も彼の主張に沿って並び替えられているので、読むにつれて彼の主義に近づいていく仕掛けになっているように思いました。
哲学史はあまり詳しくないので違うかもしれませんが。

しかしこの紹介の部分だけでもだいぶ面白く読めました。
自分が気が付かないうちにいろんな思想に基づいて判断していて、その思想にはどのような問題があって、それはまた違った思想によって解決されて、でもそうするとまたこっちに問題が生じて・・・
ケーススタディがいちいち具体的に与えられているので非常にわかりやすい。

そして問題のサンデル自身の主張ですが、これもまた非常に面白かったです。
「宗教的」「道徳的」に中立な政治などありえない、というのが彼の立場(だと僕は解釈しました)。
自らの所属するコミュニティに根差したそれぞれの「正義」もある程度は強要される、という。

僕はこの本の中に登場したアラスデア・マッキンタイアという人の「物語る存在」という考え方が一番好きですね。
人間は物語の中で役割を与えられた存在であり、ある一定の時代・社会・国・家族のもとに生まれてきたという外的な要素もあるが、その与えられた役割の中で何を成し遂げるのかはまだ決まっていない、物語を読み進めないと分からないことだという考え方ですね。
サンデルの主張を支える重要な根拠として挙げられているのですが、これには「なるほどね」と言わざるを得ませんでした。

彼の主張はまだまだつかみきれていない部分が多いので、同時に購入した「ハーバード白熱教室講義録」も併せて読み込みたいと思います。

★★★★☆
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