Kendrick Lamar / To Pimp A Butterfly

ToPimpAButterfly.jpg
3rd、2015年、アメリカ
ヒップ・ホップ

人種をレペゼンして


2015年という年は、コンプトンという年の名が世界に知れ渡った1年だったかもしれません。
映画「ストレイト・アウタ・コンプトン」が公開され記録的大ヒットを記録し、Dr. Dreがアルバム「Compton」を発表。
そしてそのコンプトン出身のこのラッパーが、このすさまじい新作を発表した。

数々の音楽メディアで「ベストアルバム2015」に選ばれたこのアルバム。
去年の暮れのそういう系のまとめ記事でその名前を知り、「そんなにいいの?」とおもってYouTubeで#7"Alright"を視聴したら、これがめちゃくちゃカッコよかった。

(#7"Alright"は2:38~)

これだけでも十分かっこいいのに、買ってから聴き込んでいくとどうやらコンセプトアルバム臭い。
めちゃくちゃシリアスなテーマでやってるっぽいぞ、と気づいてネットで検索かけたら解説サイトが出てくる出てくる。
その中でもラッパーのAKLOが「Inside Out」というラジオ番組の中でしていた解説が一番内容が濃いし、信用できると思います。(コチラ

この中でAKLOはこのアルバムについて、以下のようなコメントをしていました。

”誰にも文句言われないじゃん、もう、みたいな境地に辿り着いたんじゃないかな?と思ってます。”


まさしくそうだなと、この解説を読んで、歌詞を読みこんで、10回ほどじっくり聴き込んだのち納得しました。
ここまでやられたら、もう誰も文句は言えないでしょう。

このアルバムのテーマはずばり「黒人」
今のアメリカ社会でもいまだに根強く残る白人と黒人の間の対立。
しかしキング牧師が命を賭してまで懸命に戦ったあの時代からもう長い年月が流れ、もはやそれを強く意識することなくなってきてしまっているのも現状。
このあまりに巨大で、そしてあまりに当たりまえ過ぎて誰もが正面から切り込むことを恐れるこのテーマに今の時代に挑むこと自体称えられることであるのに、彼はこの問題に誰よりも真摯に、慎重に向き合い、そして「誰も文句の言うことができない境地」へと達したのです。

それは絶えない自己批判、そして自己探求の試みでした。

前作「Good Kid, M.A.A.D City」で得た成功から、それで調子に乗ってしまうことの危険性をうたった#1"Wesley's Theory"や、いわゆる「フッド」から抜け出すことのできない黒人の弱さを描いた#4"Institutionalized"、「黒人同士の犯罪もまだまだ多いのに、警官に黒人を殺されたとたん怒り出す。そんなのは偽善だ」と歌う#13"The Blacker The Berry"など、まるで想定される反論、批判に先手を打つかのように自己批判を繰り返すケンドリック。

さらに黒人全体のことだけではなく、個人的な苦悩さえも掘り下げ、恥じることなくさらけ出していきます。
特に#6"u"では完全に自己嫌悪に陥っています。

そこで彼が始めたのが自分のルーツを探す旅。
彼は自分たち黒人の故郷であるアフリカに足を運びます。
そこで彼は何かを得、ありとあらゆるしがらみから解放されます。

そこで歌われる#15"i"の美しさたるや。
シングルヴァージョンのPVがホントに好きで。

「俺は俺自身を愛するんだ」というメッセージが、ここまでくぐり抜けてきたすべての困難も相まってすごく力強く聞こえます。
さらに、あまりいい意味では使われない「黒人」を指す"niggas"という言葉についても、「これはエチオピアでは王、高貴な王って意味なんだ、さあ、みんなで声を出して言おう」と聴衆を鼓舞しています。

ここまで苦労して、自分の力で見つけ出したこの自信、このポジティヴなメッセージには「誰も文句は言えない」でしょう。

最後の曲#16"Mortal Man"が終わり、故・2Pacとの疑似インタビューのあと、このアルバムの最後の最後に読まれる一編の詩。
これが感動的。
「もちろん蝶と芋虫っていうのは全然違うけど、この二つは同じものなんだ」

文句なしのすごい、すごすぎるコンセプトアルバムでした。

・・・と、こういう風に書くと音楽的な面ではそうでもないのかと思われそうですが、そんなことは一切ない。
まったく、スキなんてあったもんじゃありません。

ジャズやファンクなどの黒人音楽をこよなく愛しているからこその素晴らしいトラックの数々。
生演奏で作られたものも多く、その中でもやはり際立つのが#2"For Free? (Interlude)"

一糸乱れぬすさまじいジャズバンドの演奏をバックにケンドリックが早口でひたすらにまくしたてるという非常に即興性の高い一曲。これぞ黒人音楽、といった趣でめっちゃかっこいい。

僕も一周目は何も歌詞を見ずに聴いたのですが、それでもめちゃくちゃカッコよかったからね。
ケンドリックの声質もすごくいい。聴いていて気持ちいいラップをしますね。

とにかく詞の内容も曲もすべてが素晴らしかったこのアルバム。
今年のグラミー賞、獲ってほしいなぁ。ほかのノミネート作品聴いてないけど。笑

★★★★★
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