伊藤計劃 『メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット』

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角川文庫、537ページ

物語とは人である


2015年最後に読んだ本。おそらく。
そして2015年最高の本。いや、人生最高かも。

本で泣くなんて、と思っていたけれど。

ガンガンに泣いてしまった。初めての体験だったけど。

そもそも伊藤計劃という作家が好きになって、このノベライズを読むために1~3も全部読んで、そしたら1~3もすごく面白くてすぐこのシリーズのとりこになって。
そしてこの4冊目を読み始めたらこれがまた今まで総決算みたいな作品で。
ここまで読んでいてよかった、この作品と出会えてよかったと心の底から思えました。

まだメタルギアを知らない人たちへ。
俺みたいにゲームを全くしない人間でも大丈夫。
すこしでも「面白そう」と思ったなら、ゲームなりノベライズなりで触れてほしい。
あまり自分の趣味を押し付けるのは好きじゃないけど、この作品は本当にそう思えた作品でした。
伊藤計劃自身も語っている通り、この1冊だけでも十分これまでのストーリー・キャラクターが理解できるような配慮がなされているので、最悪この1冊だけでも。
でも全部読んでから読むことを激しくお勧めします。

今年公開された「ワイルド・スピード SKY MISSION」を思い出しました。この雰囲気。
シリーズの総決算。待ち受ける最終決戦。そこに挑む男達。覚悟と執念。

これまでこの物語に登場したすべての人たちの運命が交差し、それらが一人の男、オールド・スネークの肩の上に委ねられる。
激烈なカタルシスが、君を待っている

もうちょっと内容を詳しく見ていきましょう。
オタコンを語り手にしたこと、それがこの作品、このノベライズ版の最大の特徴にして魅力、伊藤計劃が生み出した最高の発明。
あとがきで彼自身が述べている通り、これは物語をどのように語るのかという彼の徹底したこだわりが生み出した選択でした。
以下、「あとがき」より引用。

"物語を、どのように語るか。その「どのように」の部分にこそ、小説の真髄は宿っていると、私は知っています。モーセが紅海を分かち、イエスが水をワインに変える。騎士は姫のために命を懸け、少年はいずこかへと旅に出る。「むかし、むかし、あるところに」。かつて、すべての物語は小説家のものなどではなく、「どこかの、誰かの」物語でした。他者の出来事を語り継ぐこと。吟遊詩人や古代の歴史家、敬虔な使徒たちは、物語を後の世に繋ぐため、様々な「語り口」を生み出してきました。
 人が物語っていくその方法というのは、「物語そのもの」と同じくらいの意味や価値を持ちうるのです。・・・(後略)
"


実はこの「語り手」が語っている「相手」、ここにもある仕掛けがあるのですが、それはここでは伏せておきます。
僕はそれを知った時も涙を我慢できませんでした。

このオタコンを語り手にしたことによって、異常な老化によって年老いたオールド・スネークの悲哀・覚悟・孤独が絶妙に浮き上がってきていて、その雰囲気が何とも言えないこの作品の魅力となっています。
オタコンの目を通してスネークを見ることで、そこまでボロボロになっても戦い続けるスネークの姿の悲哀がもうめちゃくちゃ涙腺に来るんですよ。そんな彼を止めることができない歯がゆさも相まって。
最後の戦いに臨む前、二人が艦上で話すシーンがどうしようもなく大好きです。

この二人の戦いに登場するのは、相変わらずの顔ぶれ。
そういってはぶっきらぼうなので、おなじみの面々とでも言いましょうか。
でも、1~3で各々が背負った運命・カルマがこの戦いの中で交差し、スネークを通して収束していく。
いわば壮大な群像劇なのですが、それをオタコン・スネークの視点から描いているもんだからまた泣けるんだ。
一人称「ぼく」(オタコンが使う)がここまでいとおしく感じられる作品はそうそうないでしょう。

終わり方もまたこのシリーズらしい。きれいには終わらない、終わらせてくれない。
また続きを読みたくなります。

そして全編を通して伊藤計劃の文章がやっぱうまい。
この人の映画評論とかも読みたいなぁ。本買おう。

間違いなく、2015ベスト本。

★★★★★
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