キングギドラ / 空からの力

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1st、1995年、日本
ヒップ・ホップ

真の意味で「日本語ラップ」が生まれた瞬間


久々の日本語ラップ作品。しかも超重要作。
最近はこういう「超名作」に当たることが多くてちょっと滅入ってる。
もちろんその分素晴らしい音楽は聞いているんだけど、「これはどう書いたものか」と思うことが多い。
あまりこのブログのことを義務や重荷だと考えたくはないんだけど、やっぱり考えてしまう。

こういういわゆるそのジャンルでの「クラシック」という作品を聴くときに困るのがその作品の「歴史的」側面にどれほど注意を払うかという点だ。
いくらこういう作品の歴史的「価値」を強調されたところで、この作品を2016年に聴く僕のような若者にはいまいち伝わりづらい。
「当時としては革新的」とか言われても、今では当たり前になっていることだったり、下手したら今のアーティストのほうが「じょうず」にやってることだったりする。
もちろんだからと言って「ありきたりだ」とか「下手くそ」だと言って切り捨てるわけにもいかない。

オリジナルにはオリジナルのすごさがある。
それが具体的に何なのかはわからないけれど、やっぱり時代にはその時代の「空気感」のようなものがあると思う。
でもそれが具体的に何なのかわからないから、その部分は想像して脳内で補うしかない。
しかも僕ごときの想像力なんてたかが知れてるから、やっぱり限界がある。

そしてそのたびに思う。「リアルタイムで聴きたかった!これをリアルタイムで聴けた人たちはなんてラッキーなんだ!」と。
この思いが最近どんどん大きくなってきていた。自分の知らない過去の空気感、「作品になっていない部分」への憧憬。
でもそれが去年の秋ころから「じゃあこの現代の空気感とかそういうものを思う存分吸収してやろうじゃないか」と思い始めた。

10年後20年後に「リアルタイムで聴きたかった!これをリアルタイムで聴けた人たちはなんてラッキーなんだ!」と悔しがる若者たちに自慢できるように、今しか聞けない音楽を今ここにしかない空気感とともに。
だから新譜を注意深くチェックするし、ジャンル問わず「いい」と言われている音楽はまず聞いてみる。そしてライブにもいく。
そういう考え方にシフトした。

だから今年の目標は「2016年発表の作品を100以上紹介する」だ。アルバム・映画・本合わせて100。
とか言いつつまだ1つも紹介できてないのが現状。やばい。平均月8.3作品は紹介しないと間に合わないペースなのに。
先日David Bowieの「Black Star」を買いに行ったら売り切れてたし。ついてない。

閑話休題。
最近ついつい紹介する作品と関係ない話を長々と書いてしまう癖がある。ほどほどにしなさい。
何の話をするつもりだったんだっけ。そうそう、この作品の「歴史的側面」について。

#4"大掃除"の"何人のラッパーがちゃんと韻踏んでるのか数えて見よう 多分かなり異様に少ないぞ"というZeebraのリリックに表れている通り、この当時は、まだまだ日本語ラップというものがあまり浸透していなかったということに加えて「日本語で韻を踏む」という行為があまり積極的に行われていなかった。
英語と違って普通の文のまま韻を踏もうとすると文末の「です・ます」、過去形の「た」とかで踏むしかなく、「やっていなかった」というよりも「やれないとみんなが思っていた」というのが正しいかもしれない。

でもこのZeebraとK DUB SHINEという2人のMCはそうは思ってなかった。
体言止めや倒置法を使って、英語のラップと同じように名詞などでうまく韻を踏んでいくスタイルを彼らが開拓した。
その意味ではまさに彼らは「真の革命家」であり、そこには大いに「歴史的価値」がある。
その押韻の楽しさに彼らも虜になったのであろう、この作品は全編にわたって固い押韻の応酬が続いている。
それは当時のシーンにとっても衝撃的だっただろうが、今の我々が聴いても十分楽しめる。
当時の衝撃をそのまま追体験はできないが、やはり「オリジナルの凄み」がちゃんとくっきり刻印されている作品だ。個人的にはK DUB SHINEのもっさりしたフローがあまり好きではない(リリックのメッセージ性はすごく好きなのだが)ので、やはりZeebraのスキルフルで切れ味抜群のフローがすごく気に入った。
(*先日公開された20周年のインタビュー(YouTubeで見れます。コチラ)を聴く限り最初に日本語でこういう韻の踏み方を試したのはK DUB SHINEのほうだったようだ。最初はZeebraも英語でリリックを書いてたと語っている。それはK DUB SHINEも同様だが。)

ライミングばっかりの話になってしまったが、DJ OASISのジャジーなトラックも押しなべてかっこいい。
とくに#3"大掃除"のピアノをサンプリングしたループは文句なしで名トラック。
この作品中に漂うアンダーグラウンド臭はこのイルなビートによるところが大きいだろう。

音源としてはMVもないので、あの伝説と言われる1996年の「さんぴんCAMP」のキングギドラのライブ映像を貼っておく。
これは僕も今回初めて見たのだが、それこそこの当時のただならぬ「空気感」が映像から伝わってきて鳥肌が立った。ぜひ見ていただきたい。


続々と次世代ラッパーが産声を上げている今だからこそ、聴かれるべき作品なのかもしれない。
例えば最近人気の番組「フリースタイルダンジョン」を見て「Zeebraって何者だ?」と思ってるひとたちには本家#6"フリースタイルダンジョン"を聴いてほしい。それですべてがわかる。

★★★★★
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