パルプ・フィクション

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1994年
監督: クエンティン・タランティーノ
出演: ジョン・トラボルタ、ユマ・サーマン、サミュエル・L・ジャクソン、ブルース・ウィリス、ティム・ロス

ただただ「かっこいい」映画


「今更この名作見ました」シリーズ。

最近、村上春樹がファンからのメール・質問に答えた「村上さんのところ」という本を読んでいるのだが、何せ電子版は彼が答えた返答3716問が完全収録されていて、あのプルーストの「失われた時を求めて」に匹敵する長さになっていて、読書というよりも暇つぶしに読むといった感じ。じっくり読むものでもないだろうし。
いつ読み終えるかもわからないし、読んでも感想をここに書くかどうかわからない。本って感じもあまりしないし。

その中で、小説の持つメッセージについての質問に対して、村上春樹はこのように答えていた。

「意味はようわからんけど、なんかおもろいし、読んだあと腹にたまるんや」(なぜか関西弁になる)というのが僕の考える小説の理想のかたちです。


そして、この映画がまさにそういう映画だった。

この映画が苦手な人は多くいると思う。
事実、某質問サイト上では「この映画は結局何がいいたいの?これのどこがいいの?」と質問している人が見受けられた。
それに対して回答者が「これは感覚で楽しむ映画で、そういうものを考えながら見るものではない」と必死で回答していたが、おそらく質問者は納得しないであろう。
これは全く平行線上の議論であり、この映画の魅力はやはり人に言われて納得する類のものではないだろう。
事実、昔の僕だったら「なんだこの映画、内容がないじゃないか」と思っていただろう。
だから今回、この映画の良さがすんなりと分かったときは驚いたし、うれしかった。

ビールのうまさがわかるようになった時と例えればわかっていただけるだろうか。
お酒を飲みたての頃は「苦いだけじゃん」と思う。先輩方に「いや味じゃないんだよ、のどごしなんだよ」とか言われても全然ピンとこない。
結局自分の中で「ビールうめぇ!!」と心から思える瞬間が来るのを待つしかないのだ。
世の中にはそういう、理不尽なものがあるものなのだ。

「パルプ・フィクション」(低俗な小説、ぐらいの意味)というタイトルが指し示す通り、この映画には内容があってないようなものだ。
こう言うと怒る人がいるかもしれないが、別に僕はけなしているわけではない。
「内容がないのにずっと見ていられる」というのがこの映画のすごいところであり、この映画が愛されるゆえんだ。
この映画にメッセージ性を読み取って、それを手に力説している人がいたら、僕はその人を少し疑ってしまうかもしれない。
多分その人は内容がない映画を気に入ってしまった自分が怖くて、内容があるように見せかけようとしているのだろう。
「あのケースの中身は何なんだ?」みたいな論争も僕に言わせればナンセンスだ。あの中身なんて、なんだっていいのだ。

では、なんでこの映画はここまで人を引き付けるのだろうか。
その理由はただ一つ、ただただ「かっこいいから」である。

まずキャスト陣。
俳優の名前を全然知らない僕が見ても知ってる名前がぞろぞろ。
この映画から目が出た人もいるのだろうか?その辺は全く詳しくないので割愛する。
でもやはり見た目でスタイリッシュな人ばかりでてる、それだけで十分魅力的だ。

そして「ワル」な雰囲気。
「Fuck」という言葉を連発する登場人物たち、ヘロイン、コカイン、殺し、強盗、逃亡劇・・・
いわゆる「ノワール」と言われる空気感。
見る側はその「非日常」を求めてこの映画を見る。
そしてそのワルたちの描き方がいちいちスタイリッシュだったりする。

そしてちょっと「ウィットに富んでる『感』」の演出のうまさ。
短いエピソードの連続なんだけど、それがつながってたり、時間軸が逆転してたり、伏線があったりと、そういう「オシャレ」な演出が非常に効果的。
でもなんかあえて「」をつけてしまうような、ちょっと鼻につくくらいの演出だ。それくらいがちょうどいい。
絶妙な「フィクション感」「作り物感」というか。

こういった要素を踏まえると、最初で村上春樹を引用しておいてなんだがこの映画は伊坂幸太郎の作品に似ている気がする。
あの人の作品もみんなちょっと「知的」な感じが(少し過剰なくらいに)あるし、犯罪を描いたものが多い気がする。
そして何より、この「内容があるようで実はあまりない」という点がぴたりと符合する。
もしかしたら村上春樹の作品とも通じるものがあるのかもしれないが、あまり読んだことがないのと、読んだのがかなり前だったので思い出せない。
あの聖書の引用がでっち上げだ、というのも「グラスホッパー」を思い出しました。
あれも中に出てくるロック・ミュージシャンや映画が架空のものだった。

そしてこの映画を語るうえで欠かせないのが音楽。
オープニングの"Misirlou"は誰もが聴いたことがあるであろう有名曲。やっぱり流れると興奮する。
The Black Eyed Peasの曲"Pump It"でも大胆にサンプリングされていて、これまたかっこいい。


このオープニングばっかり取り沙汰されるが、僕が気に入ったのはエンディングテーマ。
これまたサーフロックなのだが、今風に言うと「激シブ」ってやつだ。
下の動画の1:20~のサックスが何とも言えずかっこいい。渋い。これはビールよりもコーヒーの苦さだ。


「大人のかっこよさ」がぎゅっと詰まった珠玉の一本だ。
ビールのおいしさがわかるようになったら、見るといいかもしれない。

★★★★★


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Theme: 映画レビュー - Genre: 映画

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