David Bowie / ★

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25th、2016年、イギリス
アート・ロック / ジャズ

イギリスの忌野清志郎?


もはや「追悼」の二文字とセットになってしまった感のあるデヴィッド・ボウイ。
こういう言い方は不謹慎かもしれないが。
猫も杓子も「デヴィッド・ボウイ追悼」だ。2016年はこのビッグニュースから始まった感がある。
なんだかんだあってすごい始まり方をした今年ですが、この2月になってもいまだにその名前が聞こえてくるデヴィッド・ボウイっていうのは、やっぱりすごい存在だったんだなぁと。
某極み乙女。とか某MAPなんてちっぽけちっぽけ。

今年から世間一般で注目されているリリースは買ってみようと思っていたので、訃報の前からこの作品は買おうと思っていた。
でも、これまでの彼の作品は一つとして聴いたことがない。
触れた作品でいえば映画「戦場のメリークリスマス」(1983)を去年見たくらいだ。
先月見た映画「ウォールフラワー」で楽曲"Heroes"を聴くまでは楽曲も一つも知らなかったほどだ。

そしてこの作品リリースの2日後にボウイは死去。
世間一般に「追悼ムード」があふれかえり、このアルバムは2週間ほど品切れのままだった。
ネットを見れば絶賛の嵐。誰もが彼の死を悼むとともに、この置き土産に熱狂していた。
もはや音楽ファンとしてこの作品を聴かないことは禁忌とされているかのような雰囲気だった。
これまた不謹慎な言い方だが最大のプロモーションになったのではないだろうか。ゲスの極み某。なんかもう霞んで見えない。

でも、僕はこれまでの彼のキャリアについての知識が皆無。
よってこれから書く感想は、純粋に僕個人がこのアルバムという音楽作品を聴いて思ったことだ。
トーシロ―が何か云ってらぁくらいに思っていただきたい。
もっと深い解説とか感想が読みたい方はもっと別のブロガーが素晴らしい記事をたくさん書いているのでそちらをどうぞ。

一番最初に聴いて思ったことは「なんだかよくわからんがすごい」ということ。
これはあの2015年の大傑作、Kendrick LamarTo Pimp A Butterfly」を聴いたときに似た感情かもしれない。
他でもない、このアルバムが影響を受けたアルバムだ。

これは単に僕の音楽的知識の不足、語彙の不足から生じたことだが、とにかく「なんだかすごい」と思わざるを得ない説得力があった。
ジャンルもなんだかよくわからない。
でもとにかく「新しいもの」を生み出そうとしていること、そしてその企てが成功していることだけが伝わってきた。

そりゃもう69にもなるおじいさんがね、これだけ普通じゃない音楽を作って、#1"★"みたいな10分という長さのタイトルトラックを作ってね、これまたアートでゲージュツなMVを作ってね、そしてリリース2日後に亡くなってみ。
誰でもその中に凄みを見出したくもなるし、絶賛しなきゃいけない感じにもなるよ。

・・・だからと言って僕はこの作品が好きじゃないとかすごくないとか思っているわけでは全然ない。
そういう外的要因を頑張って頭の中で引き算してもやっぱり素晴らしいアルバムである。
ただうらやましいのは彼のキャリアをこれまでずっと共有してきて、これまでの文脈を踏まえた上でこの作品と出会えた人たちのこと。
もちろんその文脈を取っ払ってもこのアルバムがすごいのには変わりはないが(すごく言い訳がましくなってしまうのがいやだ)、やっぱりこれだけのキャリアを誇るカルト・ヒーロー、しかも最後の作品ともなるとやっぱり文脈という名の額縁に入れたほうがきれいに見えるにきまってる。そんなのうらやましいわ。

そして僕の中でたどり着いた結論が、デヴィッド・ボウイ=忌野清志郎ということ。
またこんな安易なたとえをして若造が、って感じですねすみません。
忌野清志郎の音楽も僕はちゃんと聴いたことがない(2発殴ってもよい)のだが、今ググってみたらやっぱり比べている人は多かった。
この独特な歌いまわしや年を取ってもなお尖り続けた姿勢、各ジャンルとの交配を厭わない柔軟さ、そして亡くなった際の各界からの追悼の声の多さ、カルト的な人気。
今回この作品を聴いてこの共通点に気づき、妙に腑に落ちた。何に、と聞かれてもよくわからないが。「妙に」なんだから。

ちょっとはサウンド的な部分もお話ししましょうか。
上にも書いた通り、Kendrick Lamarの新譜からかなり影響を受けたというこの作品、随所にサックスをはじめとする木管楽器が入っていて、これがロックやダンスミュージックと混じり合い何とも言えないカタルシスを生み出している。
「69歳になってもなおこんなチャレンジ精神を持ったアーティストを僕はほかに知らない。」この作品のレビューに腐るほど出てくるフレーズだが、ひとたびこの作品を聴けばこれを思わずにはいられないだろう。
たった7曲なのに、ほんとに映画を一本見せられているような、非常に高い芸術性を持った作品。
音楽の持つ「芸術性」(これしか言い表す表現を知らない)に気づき始めたのはつい最近だが、この作品はまさにそういうものだった。
歌詞の持つメッセージ性まではまだ完全には理解できていないが、そこも含めて総合芸術として申し分ない出来だ。

と、どうしても純粋なサウンドの話からは離れて行ってしまうが、純粋に曲としてもかっこいい。
特にドラムとサックスが全編にわたって素晴らしい仕事をしている。こんな優れてミュージシャンたちに囲まれて作品を作ることができてさぞ幸せだったことだろう。

最後の2曲が泣かせにかかってるんだよな・・・完全に。ずるいわ・・・

★★★★★
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