SKY-HI / カタルシス

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2nd、2016年、日本
ヒップ・ホップ / ポップ

メジャーなフィールドでラップできる強み


Apple Music、始めたよ。
なぜか今まで躊躇してたんだけど、もうなりふり構ってられないんで。
もう時代が進んでいくにつれて若いリスナーが聴くべき(というか聴きたくなる)名盤は増えていくわけで、こういうサービスでもなければいくらお金があったって足りないよ。

というわけで、カナダに居ながらにして邦楽の新譜も聴くことができるというわけだ。
それでまず聴きたいと思ったのがこのアルバム。
先月リリースされたばかりのSKY-HIのニューアルバムだ。

SKY-HIを初めて聴いたのは僕が日本語ラップを聴き始めたばかりのころ、今でもよく読んでいるブログ「HIPHOPの必須トーク」のこの記事がきっかけ。
そこで#7"F-3"が紹介されていて、そりゃもうイチコロ。
AAAのメンバーだっていうのもそこで知って、二重の意味で衝撃を受けた。


そこから彼のファンになって、彼の曲や彼が客演している曲(これがめちゃくちゃある)をYouTubeで聴きあさったりはしていたものの、作品としてアルバムを通して聴いたことはこれまでなかった。
ソロデビューアルバム「TRICKSTER」(2014)は借りていたものの今まで手付かずのまま。

シングル「Enter The Dungeon」(コンセプトにどうしても合わなかったのか、アルバム未収録)が番組「フリースタイルダンジョン」のテーマソングとなり、SKY-HIとしての精力的な活動もだんだんと実を結び、ヒップホップ界・一般層両方から認められる存在となりつつあるラッパー・SKY-HI。
そんな彼がこのタイミングでニューアルバムを出したというから聴かない手はなかった。

彼の魅力としてはチョーカッコいい声固い押韻自信満々なアティテュードの3つが挙げられると思う。
結論から言ってしまえば、この3つの彼の魅力が存分に発揮されているアルバムになっている。
文句なしにラップとしてかっこいい。
彼の滑舌のいい切れ味抜群のラップが炸裂しまくっている。
純粋なラップじゃなくてメロディに乗せて歌う場面も多いのだが(そういうフロウというよりも完全なる歌)、そこでもきちんと韻を意識した歌詞になっていて聴いてて実に心地いい。
ラップの声も歌う声もかっこいい。そして顔もかっこいい・・・

そしてこのアルバムの素晴らしさは彼のラップそれだけにとどまらない。
まずリリックの内容。タイトル「カタルシス」も「語る・死す」からしてダブルミーニングになっていて、非常にコンシャスな内容になっていることを予感させる。僕は初見で気が付けなかったけどね。
個別の曲についての解説は本人がこの記事でいろいろしゃべってくれているので割愛するが(というかこっちを読んでくれたほうがわかりやすい)、すごくパーソナルな曲もあったりして、きちんと読み込みたくなるリリックだ。

でも個人的にはこういう解説をがっつりしてしまうアーティストが苦手だったりする。
聴き手の想像力を削いでしまうことになりかねないし、ともすれば単なる押しつけになりかねない。
彼の場合インタビューという形だからまだ許す気になれるが、自分のアルバムにシンパどもを集めた「座談会」を載せてしまうマキシマム ザ ホルモンのマキシマムザ亮君や自分のブログに痛々しい「曲解説」を書いてしまう[Alexandros]のギタボみたいに、こういうことをやるやつにはろくなやつがいない。
前にも書いたが、聴き手に伝わる自信がないなら作品をリリースしなければいいし、伝わらなかったなら自分の力不足だと自省をするほかないのだ。

アルバムの話に戻ろう。
全体の構成も素晴らしい。
そんなに詞の内容にこだわりがあればあるほど曲順もこだわるのも納得の流れだが、これがまたかなりいい形で結実している。
上の解説インタビューの中でも触れられていた「To Pimp A Butterfly」からの影響も聴いてて感じるほどだった。

さらに、DJ WATARAIKREVAMummy-D蔦谷好位置などをプロデュースとして迎えたトラックもこのアルバムを彩っている。
詞の内容やこのアルバム全体の物語に見事にマッチしているトラックばかりで、もはやこのアルバムに死角はない!と言い切りたくなる仕上がりだ

・・・と、全体的な話をしていてもなかなかわかりづらいと思うので、MV公開曲も多いことだし気に入った曲を曲単位で紹介しようと思う。

#2"Ms. Liberty"

きらびやかなホーンセクションがまぶしいトラックに乗せてSKY-HIのスキルフルなラップが乗っかる一曲。
トラックよし、ラップよし。はい、名曲。
「自由」を"Ms. Liberty"と擬人化したリリックも秀逸。

#5"LUCE"
#6"As A Sugar"
この2曲はMV公開曲ではないが、アルバムを通して僕がすごく気に入った曲だし、アルバムの構成上重要な位置を占める曲だ。
前者は自ら命を絶ってしまった友人についての曲であり、アルバムの中でも一番パーソナルでダークな曲。
その曲を受けて半ばインタールード的な雰囲気を持つ後者は、ビートのないストリングのトラック(KREVAプロデュース)に乗せてSKY-HIが力強くラップする一曲。
悲しみに向き合う孤独、そしてその悲しみを乗りこえる力強さをそのまま体現したかのようなリリックとトラックのマッチングが素晴らしい。鳥肌が立った。
特に後半の感情をむき出しにした早口ラップには涙を禁じ得なかった。

#10"Seaside Bound"

ここまで紹介してきた曲はどちらかというとラップ主体のヒップ・ホップ色の強い曲だが、ポップな曲の中で1曲選べと言われればこれを選ぶ。
壮大な雰囲気のトラックに絶品の歌メロ。そう、この曲は歌メロが素晴らしい。
トラックも緩急がついていていい。ドラムで叩きたい一曲!

日本語ラップ界にとっては貴重な存在。
これからもどんどん貪欲に活動していってほしい。

★★★★★
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