Creepy Nuts / たりないふたり

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1stEP、2016年、日本
ヒップ・ホップ

歪んだ精神世界、モテない男の逆襲!!


やっぱりApple Music最高だね。海外にいるととても便利。
この作品もAmazonで注文して実家に発送済みなのだが、何せ帰国するまでは聴けないだろうなと思っていたのでこうやって聴けたのはうれしいことだ。amazarashiの新譜も同じく帰国まで聴けないと思ってたから楽しみ楽しみ。

さて、去年秋にリリースしたシングル「刹那」以降とにかく精力的な活動が目立つこの二人。
番組「フリースタイルダンジョン」も軌道に乗り、最近ではラジオにテレビに引っ張りだこのR-指定(と、ときどきDJ松永)。
バトルではDOTAMAに「KREVAに成り替わるんじゃなかったのかよ」とディスられていたが、バトルシーンからのし上がってメジャーで売れているラッパーなんてほとんどいないわけで、そんな中で音源も出してバトルもしてテレビにも出れる彼はもはやバトル界というくくりだけではとらえられないラッパーになった。

最近の彼は、よく「非モテ系ラッパー」として紹介されることが多い。
こないだ出演していた「ナカイの窓」でもそういう話をしていた。
やっぱり日本のテレビに出るにはキャラが必要なんだなぁ。
もちろんとってたつけたキャラではなくて彼はずっとそういうパーソナリティを持っていたと思うのだが、バトルシーンにおける彼のあまりの無敵っぷりに慣れてしまっていた我々は、そのバトラーとしての仮面を剥ぎ取ったら見えてきたその素顔に新鮮味を感じる。
一言でいえば「バトルだけじゃなかった」ということに尽きるのだが、やはり表現したいことを持っているアーティストが強いのは当たり前だ。だからこうして音源でも勝負できるのだ。
半ば内輪ノリというか、「ヒップ・ホップで食っていくんだ」みたいないわゆる「ラップだけ」のラッパーとは一線を画している。

特に僕がこの作品を聴いて思ったのがR-指定のワードセンス。
彼がバトルで強いのはただただ固い韻を踏むとかアンサーを的確に返すとかそういうことだけじゃなくて、言葉のチョイスが素晴らしいからだと思っている。
普通のラッパーが知らないような言葉をたくさん知っていて、その豊富なボキャブラリーを瞬時に引き出せる強み。これこそが彼の本当の強さだ。
即興のフリースタイルでさえそうなのだから、こういう音源でのラップはその言葉の力に拍車がかかっている。
このレビューではこの5曲の中で思わず僕が声を出して笑ってしまったり鳥肌が立ったリリックを紹介したいと思う。
読んで「聴いてみたい!」と思っていただけたら幸いだ。


#1"合法的トビ方ノススメ"

まずこの曲タイトルからしてBIG UP!だ。
どうしてもヒップ・ホップ界に付きまとうこういった黒いイメージ。それを逆手にとってこんな素晴らしい歌詞の世界観を創り上げた彼に脱帽だ。清原のなにがしにも聞かせてやりたい。
この曲の中でも僕が光っていると思ったのがこの一行。

"いつもはぐらかしてたぶらかしてくる ファム・ファタールの名はMusic!"


「ファム・ファタール」ってなんやねん!
調べてみると、

ファム・ファタール(仏:Femme fatale)は、男にとっての「運命の女」(運命的な恋愛の相手、もしくは赤い糸で結ばれた相手)の意味。また、男を破滅させる魔性の女(悪女)のこと。―Wikipediaより


これこそが彼のボキャブラリーの神髄。
語学をやったことがある人ならわかると思うが、ある単語を知っているのと実際に使えるのは全然違う。
これをこういう韻の固いフローに落とし込んでそれでいて意味も通す、素晴らしい才能だ。


#2"みんなちがって、みんないい。"
間違いなく今作で一番の問題作。
色んなラッパーの物まね(何人かは本当に実在の人をモデルにしていると思われる)をひたすらしまくって、それでいて「みんなちがって、みんないい。」というきわめて平和的な曲なのだが、ここは大爆笑してしまった。誰の物まねか考えながら読んでみてほしい。

君に伝えたいことがあるんだ 君は一人じゃないから
いつも応援してるから 夢は必ず叶うから
ああ 愛してる君だけを これからも守り続けるよ


ここは悪意あるだろ!笑ソナーポケットあたりかな。
お笑いコンビ・ニューヨークのこのネタを思い出した。



#3"爆ぜろ!"
MOP of HEADをフューチャリングしたこの曲はトラックがめちゃくちゃかっこいいのだが、もちろんラップもさえわたっている。

冷めた目で見る浮世のイザコザ サルと犬となんじゃこらワレこら
虎の威を借りる狐がチラホラ 豚もメスならチヤホヤ 爆ぜろ!


「フリースタイルダンジョン」での対MCニガリ戦で彼は「色」を使ってうまく彼をディスっていたが、このラインでは「動物」をテーマに連なったライムが気持ちいいラインだ。
こういう言葉遊びのうまさもまた彼の強み。褒めすぎかしら。


#4"中学12年生"
この曲、このミニアルバムでいっちばん大好き。
自分の中学時代と重ね合わせてもうひたすらテンションがぶちあがる。

友情 愛情 まともに勉強 俺が選んだのはチェケラッチョ


このラインもグッとくる。
でも俺が一番笑ったのがこのライン。

前略プロフ ホムペ足跡 鍵付き日記の病んでるあの子
キリ番カキコ カラムーチョ レペゼン魔法のiらんど
リアルBBSリンク 卍で囲めハンドルネーム ○○夫妻 本当はブサイク
いつメン ズッ友 詐欺写メウザい


こういうガラケー時代のネットあるあるが歌になって完全に「過去の産物」となる日が来るなんてね。年取ったなぁ。
モテない中学時代を送ったすべての人に贈るアンセムだ。


#5"たりないふたり"
自らを足りない二人と自称する彼らの本音をぶちまけた一曲。

大きな声で騒ぐ陽気なタイプとは仲良くなれそうもない
だってあいつら空気読みあいウェーイ飛び交いまともな脳みそ無い


もうね、これ。サイコー。
これでいて「サイコなお友達」って言ってくれるからね彼ら。泣けるよね。

自意識過剰 被害妄想 自己顕示欲の大暴走
偏見まみれの色眼鏡かけて 今日も視界良好


これはこのアルバムの宣伝にも使われていたラインだけど、文字にしてもすごいグッと伝わってくるからすごい。
このラインはこのラインでバカリズムのこのネタを思い出した。



やっぱお笑いでも音楽でも、モテなかった人ほど強いよね。
絶対にそう。じゃないと釣り合いが取れないだろ。

★★★★☆+α
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