川上健一 『翼はいつまでも』

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集英社、347ページ

サイッコーの青春小説


誰だったか覚えていないんですけど、「最高の青春映画は、『もう一度あいつらに会いたいなあ』と思わせてくれる映画だ」みたいなことを言っていた気がするんです。
確かRHYMESTERの宇多丸氏だった気がするんですけど。
この本はまさにそんな一冊でした。ほんと、サイッコーの青春小説でした。
青春モノが読みたい!という気分の人には真っ先にオススメしたいです。

<こんな話だよ!(裏表紙内容紹介より抜粋)>
青森の平凡な中学生・神山は、補欠の野球部員。米軍放送で聴いた曲が彼を変えた。ビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」。この曲に勇気づけられレギュラーに。県大会優勝を合言葉にチームも強くなるが、教師たちに振りまわされ、夢は砕けてしまう。3年生の夏休み、大人になろうと一人、十和田湖に旅立った彼は初恋を知る。本の雑誌が選ぶ2001年度ベスト1、第17回坪田譲治文学賞受賞の傑作。



作者の川上健一さん、実は作家デビューは1977年とかなりの古参。
青森県出身ということで、同郷なのでうれしいです。母方の実家の方と少し近いところ。
でもデビュー作のあとは鳴かず飛ばずで、何を思ったのかなぜか山梨県に移住して自給自足生活を送っていたとか。なぜだ。
そのあとこの小説で再デビューという形になって今に至るみたいです。
映画化作品も3つほどあるみたいで結構な売れっ子といってもいいでしょう。

この小説は彼自身の半自伝的小説らしくて、舞台も青森県。
十和田湖や三沢駅など、僕も行ったことがあるような場所が出てきて個人的には胸が熱い思いでした。

もうね、なんて言ったらいいんだろう。
まず、ベッタベタのベタ。
バナナマンが昔コントでやってたようなベタ~な設定です。
正直「こんなのありえないよ!」と文句を言いたくなるほどめちゃくちゃど真ん中だし、めちゃくちゃいい話。

でも、ベタベタっていうけど、実際の中学生ってこんなもんだよな、と思わせてくる。
完全なるフィクションのように見えて、実はめちゃくちゃリアルな描写だったりするんです。
もう大人になってしまった僕らから見たら「ありえねーwww」ような出来事でも、中学生にとっては全然リアル。
あの中学生の頃の、いろんな感情がないまぜになってパンパンに膨れ上がった心の中。
読んでいくうちにあたかも自分の青春を追体験しているかのような錯覚に陥ります。

実際、これを読んでいくうちに頭の中で勝手にキャスティングが始まるんですよ。
輪島はあいつだろ、で阿部貞子はあいつで、斉藤多恵は・・・みたいな。
だからこの小説はちょっと映画化してほしくはないかな。
たぶん読んだ人の分だけキャスティングがあると思うから。

いやー、それにしてもこの小説の中のようなカンカン照りの日差しを脳に直接浴びているような、とにかくまぶしい読書でした。
あのじりじり焼けるような刹那的な感覚。あの感覚を文字に起こせるセンスがすごい。
解説で角田光代さんも書いていますが、中学生に少し戻ってみてもいいかなと思いました。

この夏、十和田湖に行ってみるのもいいかなと思いました。

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