川崎大助 『日本のロック名盤ベスト100』

japanesealltimebest100.jpg
講談社、296ページ

とにかく批判的な「日本のロック」の歴史


Apple Musicを始めた今、ディスクガイドを読むことにようやく意味を見いだせてきた気がするので、さっそくこの本を購入して読んでみました。

こんな本です(amazonの商品の説明より抜粋)>
本邦初!これが真のオールタイム・ベストだ!!
日本のロック「オールタイム・ベスト」1位~100位を、著者独自の「五つの指標」と「レコードじゃんけん」で完全ランキング。見事ランクインした次の名盤は、いったい何位に選ばれているのか!?

佐野元春『SOMEDAY』、矢野顕子『JAPANESE GIRL』、山下達郎『SPACY』、荒井由実『ひこうき雲』、たま『ひるね』、X『BLUE BLOOD』、暗黒大陸じゃがたら『南蛮渡来』、大滝詠一『ロング・バケイション』、電気グルーヴ『A(エース)』、サザンオールスターズ『人気者で行こう』、PUFFY『JET CD』、宇多田ヒカル『ファースト・ラヴ』、ミスター・チルドレン『Atomic Heart』……


僕の邦楽ロックへの造詣の浅さを思い知る読書体験でした。
100枚選ばれたアルバムのうち、聴いたことがあったのは74位にランクインしていたキングギドラ空からの力」(1995)、同79位のマキシマム ザ ホルモンぶっ生き返す」(2007)の2枚だけ、知らないアーティストが半分くらいと、自分の無知さ、そしてこれから切り開いていかなければならない(勝手に感じている義務感ですが)未開拓の土地の広さに半ば絶望的な驚きを禁じえませんでした。
ちなみにこのランキング100枚のうち、僕がApple Musicを使ってライブラリに入れることができたのはわずか29枚でした。ちゃんちゃん。

ランキングがどんな感じか気になる人向けに、トップ10だけ以下に抜粋しておきますね(表記は本文に準拠)。
1位: はっぴいえんど / 風街ろまん(1971)
2位: RCサセクション / ラプソディー(1980)
3位: ザ・ブルーハーツ / ザ・ブルーハーツ(1987)
4位: イエロー・マジック・オーケストラ / ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー(1979)
5位: 矢沢永吉 / ゴールドラッシュ(1978)
6位: 喜納昌吉&チャンプルーズ / 喜納昌吉&チャンプルーズ(1977)
7位: 大滝詠一 / ロング・バケイション(1981)
8位: フィッシュマンズ / 空中キャンプ(1996)
9位: サディスティック・ミカ・バンド / 黒船(1974)
10位: コーネリアス / FANTASMA(1997)

amazonのレビューやネット上の反応を見ると、やっぱり熱心なファンからするといろいろ文句が言いたくなるみたいですが、僕のような門外漢からすると、まずはこのランキングから始めてみるしかないというか。

まさにそれこそがこの筆者が意図していたことなのです。
彼の出発点は、「なぜ日本にはオールタイムベストがないんだ?」というある種危機感ともいえる問題意識であり、彼自身が先陣を切ってこういう活動を行っていこうという目的をもって作られたランキングであるということを忘れてはいけません。
彼はこのランキングを発表することによって「日本のロック」というものについてもっとたくさんの人が真剣に考えたり、討論したりするとことをおそらく願っているのでしょう。

本書の構成としては、まずババンと1~100位のランキングを載せ、そのあとは100枚すべてについて上位は1ページ半、下位は1ページ(おそらく。Kindle版なので紙の本ではどうなのかわからない)のディスクレビュー・解説がなされています。それが第1章。
ここまでは普通のディスクガイド本です。ここまでで十分有益な本といえるでしょう。少なくとも僕のような初心者リスナーにとっては。

でもこの本の真骨頂は第二章以降で語られる「『日本のロック』の歴史」。
これまで僕はこのトピックについて体系的に論じられている文章を読んだことがなかったので非常に楽しく読めました。
本場アメリカで生まれた「ロックンロール」とはそもそも何だったのか、そして日本はそれをいかにして受容しかみ砕いていったのか。それが非常に批判的で鋭い口調で書かれているのが本書の最大の特徴です。

筆者曰く、日本のロック歴史は「失敗」と「遅れ」の連続だった、と。

「遅れ」という意味ではやはり第二章での「ビートルズ」「GS」「歌謡曲」についての振り返りが面白かったです。ビートルズが来日したときに本当の意味での「ロック」を理解していた人間は少なかった、という内容。以下引用。

"つまり、音楽そのものは輸入されていたにもかかわらず、「ロックンロールの誕生の衝撃」は、日本にはとくに伝播してこなかった。それだけは税関で止められていなのかもしれない、というのは僕の冗談だが、そんなことを言いたくなるほどに、五〇年代の日本において、「ロック誕生の衝撃」を体験した、という人の発言は少ない。"


失敗という意味では、外形だけを取り入れては「歌謡曲」「ニューミュージック」「Jポップ」と名前を付けてはくくりたがり、そしてその名前が使い果たされるとわかるや否やポイと捨てる日本の音楽界の体質を挙げて筆者は非難しています。
「ロックンロール」というのが黒人音楽を白人に売り込むために人工的に作られた一種抽象的な「理想」として掲げられたのに対して、日本でそれと対応する概念として用いられた「歌謡曲」「ニューミュージック」「Jポップ」という言葉はそこに確固として存在する「現状」に対して名付けられた言葉であった、と筆者は対比します。

そして彼はそんな日本の失敗を非常に悔やむような、半ば怒りに任せて筆を走らせたかのような筆致で我々に語り掛けてきます。
この語り口には好き嫌いが分かれるかもしれませんが、すくなくとも私は好感を持って読むことができました。自己批判的な人の方が好きなので。

この本を読んでいて思ったのが、「これって日本語ラップと同じことじゃん!」ってこと。
2秒考えればわかることを今までわかってなかったんですが、日本語でヒップ・ホップをやることに苦労した先人たちがいるのと同じで、日本語でロックをやろうと思った先人たちもいろんな試行錯誤をしたんだな、ということです。
だからこそこのランキングには「空からの力」もランクインしてるんだろうけど。
日本語のロック、邦ロックというものが当たり前に存在してきたと考えている人にはぜひ読んでほしい1冊です。
RCサセクションとか矢沢永吉、ひいてははっぴいえんどやYMOがなぜこんなにすごいと言われるのかイマイチぴんときていない人たちもぜひ。

単なるディスクガイド以上の読み応えがあった、非常に面白い一冊でした。オススメ!

★★★★★
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Comment

こういうものの必要性は感じていました
BOØWYが強烈でその周辺とそれ以前のものはけっこう埋もれてるようですしそれを好きという人もあまり見かけませんし
自国の先人の活動に対する敬意が欠けているという思いはありました

遅れに関しては私がよく聞くオーストラリアのものにも見受けられ00年代前半まではスパンが5年くらい遅れてる感じがしました
現在ではそうでもないのでネットの力は大きいのか流行自体薄れているのかそこまではわかりませんが

こんなこと書きつつ個人的には邦楽の濃いしみったれた歌謡曲的メロディが好きではないのでここに挙がるようなものを追いかける気にはなりません
例外はあるもののOGRE YOU ASSHOLEのようなシーンから一歩引いて独特な音を鳴らしてるバンド
もしくは米津玄師やQOOLANDみたいな10年代以降に出てきたところくらいしか注目してないです

2016/03/11 (Fri) 22:00 | akakad #OEZKBdis | URL | Edit

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