andymori / ファンファーレと熱狂

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2nd、2010年、日本
オルタナティヴ・ロック / インディー・ロック

彼らはさらなる高みへと


先日紹介した『日本のロック名盤ベスト100』という本の中のランキングで、このバンドは取り上げられていませんでした。
2000年代までのロックを対象としているのでこの2枚目以降は選考対象外だとはいえ、あの衝撃的なデビューアルバム「andymori」(2009)は入っていてもおかしくないのでは・・・なんて思ってしまいました。
このバンドはあの本の中で取り上げられている「ロック」という概念と重なる部分が多いと思うのですが。
特に日本語にこだわって書かれた詞とそれに対するメロディ・歌のアプローチなんかは十分にオリジナリティがあるし、音楽性においても洋邦を問わず大いなる先人たちから多くのものをきちんと受け継いでいるように見えるのですがねぇ。
それはこのアルバムの収録曲である"1984"の以下の歌詞からもわかることです。

親たちが追い掛けた白人たちがロックスターを追い掛けた
か弱い僕もきっとその後に続いたんだ



まあそんなことをグチグチ言っていてもしょうがないですが、今回紹介するのはそんな彼らの2枚目のアルバム、「ファンファーレと熱狂」。
あんなデビューアルバムを作ったそのすぐ次の年にここまでスケールアップした2枚目を出すことができたあたりこのバンドのポテンシャルの高さがうかがいしれます。

まずは音楽面の話をしましょう。
前作ではほとばしるエネルギーをそのまま音に乗せたような直情的な曲たちが多かったのですが、今作では一曲目の#1"1984"からして様子が違う。


もともとメロディラインにはいくらかの悲しさ、センチメンタル、郷愁のようなものを匂わせていた彼らですが、サウンド面でもその側面を出すようになりました。
このほかの曲でも押したり引いたり、上げたり下げたりの緩急・ドラマ性が増していて後述する詞世界へよりダイレクトに没入することができるようになっています。

それに加えてもともとあったメロディセンスに磨きがかかっているから素晴らしいです。
特にこの#1"1984"のサビメロなんかは一度聴いたら忘れられない珠玉のフレーズです。サイコー。
ひたすらにまっすぐで一聴すると無感情に聞こえながらも要所要所では感情を爆発させる小山田壮平(Vo, Gt.)のボーカルは相変わらずさえています。
後藤大樹(Ds.)のドラムは前作ほどの勢いはさすがに抑えられているものの、ベースとともにツボをついたプレイングで楽曲の屋台骨をしっかり支えています。

続いて詞のお話し。
僕は極めて文学音痴なので詞をじっくり読み、味わい、解釈しながら音楽を聴くということがたいそう苦手なのですが、やはりこのバンドは詞にも注目しながら聴かなければいけないなとは思っています。

このアルバムの詞の中には、繰り返し出てくるモチーフがたくさん含まれています。そのうちいくつかはアルバムをまたいで、andymoriの音楽に普遍的に現れるものです。
それは「タイランド」「サワディクラップ」「バグダッド」のような異国のイメージだったり、はたまた「高円寺」や「渋谷スクランブル」のような東京のイメージだったり、「ナツメグ」「アメリカンザリガニ」のような動物たちのイメージだったり。
こういう自分独自のメタファーの用い方って多くの優れた作家が持っているものです。
だから小山田も優れた作詞家だ、というのは極めて短絡的な考えですが、少なくとも他のロックバンドと比べたときにそういう面で「強み」があるというのは確かでしょう。
僕はまだまだこれらの詞を通じて何が見えてくるのか分かっていないけれど、少なくとも見てみたいと思わせるような文学性が備わっています。
一体僕はいつになったら歌詞をじっくり読みこんで音楽を味わうことができるようになるのだろう。

音楽面と詞の面、両方においてこのアルバムは日本のロックにおいてかなり高い水準であることは間違いないでしょう。
デビューアルバムが「衝撃」だとすれば、このセカンドアルバムは「驚異」です。

改めてこのバンドをリアルタイムで楽しめなかった悔しさが募りました。

★★★★★
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