田中詔一 『ホンダの価値観―原点から守り続けるDNA』

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角川書店、210ページ
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こんな「会社人」になりたい


<著者紹介>
1943年京都府生まれ。66年、大阪外語大卒業後、本田技研工業入社。外国部に配属され、アフリカ担当として、約25カ国の市場を開拓。70年、戦火のベトナムで二輪車販売に従事。71~77年、ブラジルに赴任し、ホンダ現地法人を設立。77年に帰国し、欧州直販課長。82~87年、フランス・ホンダ社長。87年に帰国し、国内汎用営業部長。88~96年、アメリカ・ホンダのシニア・バイス・プレジデント。96~99年、インドネシア・ホンダ総代表。99~2005年、HRD(ホンダ・レーシング・ディベロップメント)初代社長として、第三期ホンダF1の英国前線基地を統括。02~04年、地域執行役員。05年8月、定年退職


<内容紹介>
本田宗一郎時代にホンダに入社し、海外事業開拓を初期から一手に担い、F1英国前線基地の統括も行い定年退職した著者が、肌で知るホンダ哲学を赤裸々に綴る!元社員だからこそ語れるホンダ内部の真実とは。



F1ビジネス―もう一つの自動車戦争』に続いて、田中詔一さんの本です。
『F1ビジネス~』は「F1」というスポーツを主題に書かれたビジネス本だったのに対して、この本は「ホンダ」という企業にフォーカスを当て、その中に脈々と受け継がれている(と筆者が感じた)DNAについて書かれています。

まあもちろん自分が勤めていた会社に対してひたすら文句を言うわけはないので、全面的に肯定的に書かれているのですが、それが僕のような「ホンダで働いてみたい!」と思っている人たちには希望を与えてくれました。
これまでは「ホンダに入ってもF1と全く関係ない部署に配属になったらやだな・・・」なんてバカみたいなことを思っていましたが、この本を読み終わった今、「ホンダなら何でもいいので働かせてください!」って感じになってます。やっぱりF1周りがいいけど。

読んでるうちにとにかく異動や転勤が多そうなので大変そうだな、とか意外と最初の配属先は関係ないんだな、とかこれまではよくわかっていなかった「サラリーマンって何やってんの?」っていう部分がだんだんと見えてきた気がします。
第六章は「会社人としての生き方」ということで「ホンダ」という枠組みを取っ払って考えてもいいようなテーマで書かれていますが、これがまた面白かったです。
父親もサラリーマンでしたが、具体的な会社の仕組みとか、会社の中で働くっていうのはどんな感じなのかっていうのはあまり聞いたことがないし、これからもあまり聞く機会って意外となさそうなんですよね。
「社会に出て働くということ」ってどういうことなのかが少しわかる。僕と同い年くらいの人たちも読んでみるといい本かもしれません。

でも決してそれは「本当にあったエピソードの寄せ集め」というわけではなくて(そういう個々のエピソードももちろん交えてはいますが)あくまで語られる内容はホンダという企業の「価値観」「DNA」。
ホンダがまだまだ中小企業だったころに働き始め、世界的大企業にのぼりつめるまでを一平社員から役員になるまで見続けてきた筆者だからこそ語ることができる、非常に壮大なテーマです。
創業者の本田宗一郎の話ももちろん、彼の右腕として活躍した藤沢武夫の話も多いです。

また、海外に出て日本を見る、という意味では僕も今同じような経験をさせてもらっているわけで(たかが1年未満の留学ですが)、いろいろと共感できる部分や、考えさせられる部分が多々がありました。そんな部分から2か所、引用してみようと思います。

"技術力や経済力が成長したといって、日本人が成熟した国民とみられているかどうかは疑問だ。技術力や経済力を笠に着て勘違いをしたまま、世界に飛び立っている日本人が多い気がする。政治でも老獪ともいえるヨーロッパの国々に対して、時にその幼稚さが表面化することがある。"


これは確かにそうかもしれませんね。実際に成熟しているかどうかはさておいて、こういうメンタリティーでいることは大事だと思います。
あと、同じことが中国や韓国にも言えると思います。

日本語には「住めば都」という諺があるが、私の場合は、少し意味合いが違う。というのは、私が異国に住むようになったのは、あくまでも「会社のために仕事をする」ためだった。だから、味気ないことを言うようだが、各々の国のことで先ず第一に思い出すのは仕事のことであり、職場環境だ。最も親しくつき合った人たちも、職場の同僚、部下であるなど、仕事上のパートナーが殆どだ。生活面では、国によっては、仕事上の地位で規定された恵まれた待遇を受ける時もあったが、私にはいつもそれは駐在期間に限った「仮の姿」、「仮住まい」だという意識があった。「楽しかった」のは仕事のことであり、その土地での生活感は希薄だったと言わざるを得ない。日本に帰って初めて、等身大の生活に戻る感じがするのだ。


これは僕が留学について考えるところと重なるところがあって感銘を受けました。
留学先で薄っぺらい友情だの愛情だのをはぐくんでいる人たちには嫌気がさしますからね。

目指す理想の社会人・会社人像を固めることができた、非常にいい読書でした。

★★★★☆
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