Lloyd Jones "Mister Pip"

mister pip
274ページ
Amazon

「対比」「物語」のお話


<こんな本だよ!>(翻訳版amazonページより抜粋)
 舞台は1990年初頭、ブーゲンヴィル島がパプア・ニューギニア政府によって封鎖された三年間。島の唯一の白人ミスター・ワッツが、ディケンズの小説『大いなる遺産』を子どもたちに一章ずつ朗読するところから物語は始まる。
 子どもたちは作品に描かれた英国社会に最初はとまどうが、次第に主人公の孤児ピップが本当に生きているように感じはじめ、村に近づく独立抗争の暗い影におびえつつも、ピップの世界で想像をふくらませる。
 パプア・ニューギニア政府が送りこんだ兵士たちは、島の少女マティルダが砂浜に書いた「PIP」(ピップ)という文字が、革命軍の人物だと思いこみ、引き渡すよう要求する。説明しようとしたところ、教室にあるはずの『大いなる遺産』が紛失しており、怒った兵士たちは村を荒らし、家に火を放つ......。
 やがて再び、政府軍の兵士たちが村を襲い、ワッツは捕らえられ、マティルダも恐ろしい悲劇に巻き込まれる......。
 初めて本のすばらしさに触れた少女を襲う、過酷な運命とは?
*     *     *
 著者はニュージーランド出身。本書は《英連邦作家賞》ほか多数受賞、また《ブッカー賞》の最終候補にもなった。多彩な文体を駆使する類まれな才能が、いまや国際的に大きな注目を集めている。



現在こっちの大学で「文学と哲学」という題目の授業を履修しているのですが、その授業の中で取り扱われていたのがこの小説です。
このブログで洋書を紹介するのは3冊目ですね。もっともっと読みたいんですけど、いかんせん1冊あたりにかかる時間が半端ないんですよね。

読むスピード自体は全然遅くはないと思うんです。日本語のちょうど倍くらいで。
特にKindleではわからない単語も長押しするだけで辞書が出てくるので全然苦じゃないんですけど、何せモチベーションが持続しない(ダメじゃねーか)。
やっぱ使うエネルギーも全然違うし、ついつい日本語の本に逃げてしまうんですよね。
ほんとは月1ペース位で英語の本も読みたいんですけどね。

というわけでこの本も読み切るのに2か月ほどかかってしまいました。
だからはっきり言って「ストーリーをつかみ切った」という感覚はあまりないです。出直して来いって話ですね。

でも僕的にキーワードは「対比」と「物語」でした。
一つずつ見ていきましょう。

まず、「対比」。
「黒人」と「白人」。島の「内」と「外」。「善人」と「悪人」。
ことごとくいろんなものが対比的に描かれていて、その中で揺れ動く主人公・マティルダの心理描写が際立っていました。
極めつけは(軽いネタバレですが)マティルダの大切な人(一応明かさないでおきます)が兵士に殺されてしまうシーン。
その殺害が行われている間、兵士はマティルダに後ろを向いているように指示します。
そして彼女は海や空の広がりを見て、その美しさに見とれるのです。そして彼女が振り返ったとき、もうその人は兵士たちによって惨死体にされてしまっていた・・・
なんというコントラスト。こういう描き方が小説を通して多く出てきます。

そして「物語」。
まずこの白人のミスター・ワッツがチャールズ・ディケンズ「大いなる遺産」(いずれ読んでみたいですね)を子供たちに読んで聞かせます。これも物語。
あるいは「大いなる遺産」を失った後、子供たちとワッツは協力して覚えている断片を集め、小説を復元しようとします。これも物語。
あるいはミスター・ワッツの妻の葬式で、島の女性たちが妻の子供のころのエピソードをワッツに語って聞かせる場面があります。これも物語。
そして、この小説自体も実は・・・という仕掛けには途中で気づいてもよかったのですが、それが分かったときはちょっぴりウルッときましたね。
というわけで、この小説自体が「小説についての小説」になっているわけです。
上で述べた「文学と哲学」の授業でもこの小説のこの側面を取り上げています。

翻訳もされていますし、映画にもなっている作品なので、そのうちどちらかでもう一度しっかり味わいたい物語です。
英語ではもういいかな。笑

★★★☆☆
スポンサーサイト

Comment

Leave a Reply


管理者にだけ表示を許可する