Kendrick Lamar / untitled unmastered.

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コンピレーション、2016年、アメリカ
ヒップ・ホップ
Apple Music

未完成でこんなに完成されてたらもうかないません。


昨年リリースされた「To Pimp A Butterfly」が大絶賛を浴び、多くの音楽メディアに年間ベスト1位を獲得し、この間の第58回グラミー賞でも最多となる11ノミネート、5部門受賞という快挙を成し遂げた彼。
そんな彼がいきなりリリースしたのがこの未発表デモを集めたコンピレーションアルバム。
これまでの数々のTV出演の中でこの収録曲のうちいくつかは披露されていたのですが、このアルバムがリリースされることは事前に何の告知も宣伝もなされず、みんな驚いてましたね。

でもいざ発表されるとこれまた絶賛の嵐でした。
「年間ベスト級だ」って言ってる人もTwitterで見かけましたし。
今やすごいですね彼の人気は。
しかも詞の内容がここまでコンシャスなのにこれだけの人気を博しているのがすごいですね。日本との土壌の差を感じずにはいられません。

「To Pimp A~」製作中に作られたデモだということで、詞の内容やトラックの雰囲気はあのアルバムに近いものがあります。
特にトラックはあのアルバム本編に負けないくらいエクスペリメンタルな雰囲気で、この人のヒップ・ホップ、そしてそのほかの黒人音楽に対する探究心の底知れない深さに驚いた次第です。
これらは実際アルバムに使用しないことにした言ってみれば「失敗作」なのですが、それでいてこの完成度・冒険心。
所詮はコンピレーションアルバムなので「年間ベストに挙げるほどの傑作!」とは言えませんが、彼のファンならば聴くべきですし、フツーにかっこいい曲もいくつかあったりします。

8曲しかないので1曲ずつレビューしてみますか。
ちなみに詩の内容は「To Pimp A~」の時ほど詳しくは読み込んでいません、悪しからず。

#1"untitled 01 | 08.19.2014."
ラブメイキングの導入みたいな語りから、一気にケンドリックのラップが炸裂。

Another trumpet has sounded off and everyone heard it


Revelation greatest as we hearing the last trumpet


とトランペットの比喩が出てきますが、これはヨハネの黙示録の中で語られているもので、この中では世界の終末の際は天使が7つのラッパを吹くといわれています。
詞の内容は終末観と関連して人類の行く末を憂いているというものです。
かなり硬派なトラックにラップで僕は結構好き。

#2"untitled 02 | 06.23.2014."
ジャズっぽいサックスやピアノがちりばめられているものの、トラップのようなベースラインとドラムで非常にヒップ・ホップ然とした雰囲気の曲。
ケンドリックの変態ラッパーぶりが発揮されていて、一言でいえば「チョーDope」って感じですね。非常にダーク。

#3"untitled 03 | 05.28.2013."
このアルバムに収録されている中では一番古い曲になります。
この曲ではアジア人、インディアン(アメリカ原住民)、黒人、白人がそれぞれの人生の秘訣を言い合う、みたいな曲になっています。
アジア人は精神を、インディアンは土地を、黒人はプッシーを、白人は自分のものをそれぞれ大事にするというもの。
白人の部分は大分皮肉が効いてますね。
2分34秒というコンパクトな曲です。

#4"untitled 04 | 08.14.2014."
このアルバムの中で一番実験色が強い一曲。
メロディとケンドリックの早口ウィスパーが交互に飛び交い、楽器の音は効果音のようにバックでうっすらと流れるだけ。
1分50秒、スキットのようなものです。なんだかよくわかりません(それで片づけるなって話)。

#5"untitled 05 | 09.21.2014."
グラミー賞の受賞会場で披露した曲だそうです。
ベースラインやドラムの感じが非常にオールドスクールなジャジーヒップ・ホップのトラックをほうふつとさせるイントロから始まり、このゆったりしたグルーヴ感のトラックにケンドリックがそれはそれはかっこよくラップを乗せています。ふつーにかっこいいヒップ・ホップ。
でもこれはやっぱりトラックがかっこよすぎるな。シブすぎる。激シブまじぱねー。
夜とウイスキーがよく似合う曲です。詩の内容はノータッチで。

#6"untitled 06 | 06.30.2014."
ボサノヴァのようなドラムビートから始まるこの曲。全体的にオプティミスティックな雰囲気が漂っているなーと思ったら、「自分はみんなと違うけど、それがいいところなんだ」という自分に対する自信を歌ったものだったので納得。
いや~、それにしても#5といいこれといい、とにかくトラックがおしゃれすぎる。こっちはコーヒーがよく合います。サイコー。

#7"untitled 07 | 2014 - 2016"
タイトルからわかる通りこれは一つのデモではなくて、3つのデモを繋ぎ合わせた曲になっています。
1つ目のパートではトラップ調のビートにのせて軽快なラップを披露。"Levitate, levitate, levitate, levitate"という繰り返されるフレーズがかなり印象的です。
2つ目のパートではSwizz BeatzAlicia Keysの息子、Young Egyptが歌声で参加しています。どんなキラキラネームだよ。ラップはフツーにかっこいい。
3つ目のパートはギターに合わせてケンドリックが即興的に言葉を合わせていくパート。ちょっと冗長。
この8分16秒の曲が一番このアルバムの中では「未完成のデモ」感が強かったです。ほかが完成されすぎという説もあるけれど。

#8"untitled 08 | 09.06.2014."
TV番組に出演した際に披露されていた曲。このアルバムのアレンジとはだいぶ違いますが。
それにしてもこの動画のケンドリックは神がかってますね。仙人か何かか。

この曲はフツーにめちゃくちゃかっこいい。このアルバムでは一番。
ベースがありえないくらいひずんでうねってます。サイコー。
ケンドリックのフロウの無限の可能性を感じずにはいられない一曲。
とにかくラップの乗せ方がしゃれオツ。よくこんなビートアプローチ思いつくなって感じで。
あの"i"を彷彿させる開放感があります。思わず体が動く。

それにしてもこの未発表デモアルバムでもまた才能の片鱗を見せつけてしまった彼。
もはや彼のラッパーとしての地位を疑う者はいないでしょう。
孤高のソロラッパーとして、次の一手が全世界から注目される存在になりました

次はどんなことをやってくれるのか、僕はそれが楽しみで仕方ありません。

★★★★☆
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