赤い公園 / 純情ランドセル

純情ランドセル
3rd、2016年、日本
ポップ・ロック
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進化の裏に覚悟を見た


ちょっと、このレビューはかっこつけた文体で書かせてほしい。
なんだかこのアルバムを聴いたらそんな気分になったんだ。ほら、アクション映画を見に行ったあとは家に入る時もクリアリングをしながら入るだろう、そういうものだと思ってもらえればいい。



僕はもう、このアルバムを聴いて感動してしまった。
あんだけおどろおどろしい、狂気を覗き見せることもいとわない音楽性を持ってデビューした彼女らが、ここまで貪欲なまでにポップさを追求した作品を目指して、ついにそれを達成してしまったという事実に僕は打ち震えた。
ああ、津野米咲(Gt.)の夢が実現していっているな(おそらくここがゴールではない、そうでしょう?)、とその成長ぶりを目の当たりにして、まるで初めてランドセルと背負ったわが子と対面したような気持ちになってしまったんだ。
まあもちろん僕に子どもなんかいないし、ましてやこのバンドをデビュー当時から熱心に追いかけていたわけでもないのだから、あまり言いすぎるとにわかのメッキがはがれてしまうんだけどさ。

このアルバムはとにかくポップだ。こう言い切ってしまっても異論はないだろう。
透明なのか黒なのか・ランドリーで漂白を」(2012)、「公園デビュー」(2013)、「猛烈リトミック」(2014)というこれまでの作品でも、彼女らは常に「ポップ」を目指していたし、事実ポップだったのだと思う。
でもそれはとても「いびつ」で、下手に触るとけがをして、用法容量を守らないと中毒にもなりかねない、そんな代物だった。
だからこそ彼女たちの音楽を聴き始めたという人も多いだろうし、僕もその一人だ。

でも、ついにこのアルバムで彼女たちはその「いびつさ」を脱ぎ捨てる覚悟を決めてしまった。
#13"黄色い花"を聴いていただければそれは一耳瞭然。

(「いや~眼福眼福」などと普段のレビューではほざいてしまうところですね。今回は我慢我慢。)
もちろんこれはこのアルバムの中でも異色の曲で、これがアルバムの全体像だと思ってもらっては困る。
正直ここまでやるのは「異常」だ。常軌を逸した、といってもいいくらいのポップさだ。
でも裏を返せば、ここまで踏み込む「覚悟」が彼女たち、津野米咲の中で決まったということなのだ。
それが心境の変化なのか、ここまで行けるという自信がソングライティングの面でついたのか、単に「やってみた」みたいな類のものなのかはわからない。

その「覚悟」はこの#13"黄色い花"だけじゃなくて、既発シングル曲の2曲についても言えること。
どちらもきちんとバンドしている曲なんだけれど、真芯をとらえたメロディがとにかく素晴らしいもんだから、もうそれはそれは胸にズバっと入ってくる。
#3"canvas"#12"KOIKI"も、「ポップ・ロック・バンド<赤い公園>」の代表曲になるポテンシャルを秘めた大名曲だと思う。



今回は詞の内容もとてもいい。
これまでは結構抽象的な歌詞が多かったイメージなんですが、今回はすごくわかりやすい。
「あるある~!」みたいなものから「こういう見方があったか!」とか「ああ、いい・・・」となるものまで、とにかく詞も味わいながら聴くことができる極上のポップミュージックとなっている。

特に印象に残ったのが#2"東京"だ。
これまで一体いくつのバンドが「東京」という曲を作って来たのかわからないくらい、なぜか日本のミュージシャンにとっては永遠のテーマである「東京」について、この人がどんな回答を出すのか楽しみだった。
彼女が出した回答は、「東京出身だからこそ書ける東京ソング」というものだった。

お帰りと言いたくて
ただいまと言って欲しくて
どこからでもわかるように
ネオンサイン光らせてる

空が狭くても
星が隠れてても
涙流しても
夢が終わっても


これまでの「東京ソング」が歌ってこなかった「ふるさととしての東京」というテーマ。
僕が知らないだけでもうやられていることなのかもしれないけれど、僕は「なるほどな~」と唸ってしまった。

・・・と、このように、今回の赤い公園のニューアルバムは、愚直なまでにポップを目指したサウンドの上に、女の子らしくてそれでいて等身大の詞がのっかった、絶品なのだ!!
これ以上何を望もうか。

上で取り上げた以外にも津野の手によってありとあらゆるポップソングがこの世に産み落とされている。
彼女自身が「王道の赤い公園」と語る#1"ボール"、
とにかくオトナでイカしたシティ・ポップソング#5"ショートホープ"、
本当に白昼夢を見ているかのような極上の浮遊感を感じることのできる#6"デイドリーム"、
嫉妬する女の子の醜い心と美しいポップサウンドの対比が面白い#7"あなたのあのこ、いけないわたし"、
前作の"サイダー"を彷彿とさせるさわやかなサウンドに14歳のありのままを載せたストレート極まりない#9"14"、
母親への思いをどこか懐かしいメロディに載せたアルバムの中でも飛び切り明るい#10"ハンバーグ"、
指パッチンのアレンジが斬新でまるで催眠術にかけられたような不思議な気持ちになる#11"ナルコレプシー"、
「アルバムの終わり」と「一日の終わり」の境界がどんどん消えていって、聴き終わるころには思わずベッドに向かいたくなってしまう#14"おやすみ"。
これほどタイプが違う曲がなんでアルバムで聴くと流れ出スッと聴けてしまって違和感がないのか、それはもはや津野マジックとしか言いようがない。
それかバンドメンバーによるアレンジの賜物なのか。
あ、言い忘れてたけれどこのアルバムでも皆さん相変わらず演奏はものすごくうまい。特にリズム隊に耳がいくことが多かった。サイコー。

その一方で、彼女たちの持ち味の一つである、「イマドキ女子の遊びごころ」は今作でも健在で、9mm Parabellum Bulletかっていうテンションとメロディでお送りする#4"西東京"、"ひつじ屋さん"系のおふざけチューン#8"喧嘩"の2曲でそれを体感することができる。

と、結果的に全曲レビューではないが、すべての曲に触れることができた。
本当に一ミリの隙も見当たらない、素晴らしいアルバムを作り上げたと思う。
ここまで来たらどんどん行け。行けるとこまで。行け行け行け!!

かっこつけて書いてみました。とにかくサイコーのアルバムなのでぜひ、聴いてみてください!!
今のところ2016年邦楽新譜トップです。

★★★★★
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