ショート・ターム

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2013年(日本公開2014年)
監督: デスティン・ダニエル・クレットン
出演: ブリー・ラーソン、ジョン・ギャラガー・Jr、ケイトリン・ディーヴァー、ラミ・マレック

世界で一番大切なのは子供

子はかすがい。子は宝。

<あらすじ>
物語の舞台は、ティーンエイジャーをケアするシェルター「ショート・ターム」。ここで働く20代のケアマネージャー、グレイスと、同僚でボーイフレンドのメイソン。子供ができたことをきっかけに、2人の将来はささやかながら、幸せなものになるかと思われたが……。たったひとりの信頼できる彼にも打ち明けられない、深い心の闇を抱えるグレイスと傷ついた子供たちの未来は……?



iTunesの「今週の映画」のコーナー、実はちゃんと意味のあるチョイスだったりするんですよね。
今話題の映画にかかったセレクトがなされていることが多くて。
この映画で主演を務めているブリー・ラーソンという人は現在日本で公開中の「ルーム」に出演している人だそうです。
残念ながら「ルーム」は劇場では見れないだろうけど、こういうタイミングじゃないとこの「ショート・ターム」という作品にも出会えなかったと思います。ナイス。

さて、その「ルーム」もある意味児童虐待を描いた作品(なのでしょう、見ていないのであまり詳しくは言えませんが)ですが、この作品はもっと正面からこの問題に切り込んでいるといえるでしょう。
僕はこの映画を見て「やっぱり世界で一番大事にしないといけないのは子供の笑顔だ」なんていう当たり前のことに改めて気づかされました。

主人公たちが働いているのは問題を抱えたティーンエイジャーが収容される施設。
「ショート・ターム 12」という名前とは裏腹に実態としては何年もそこにいっぱなしの子供のいるようで、この問題の解決の難しさが見て取れます。
のっけから脱走を試みる少年が登場したりと、この物語は常に子供たちの心の問題という繊細でデリケートな緊張感とともに進行してきます。
事実、物語の中では喧嘩をしてしまう子供たちやさらには自殺を図ってしまう子供も出てくるなど、なかなかショッキングな場面も多々。

それでもこの映画が素晴らしいのは、そういう子供たちを含め、あるいはそういった子供たちを保護する立場にある主人公でさえ、どん底の状態から成長していく姿を描いているからです。
虐待のことを人に言えなかったり、本当に思い悩んでいることを恋人に打ち明けられなかったり。
こういう子供たちの気持ちを酌んであげることができなかったり、未来に希望が見出せなかったり。
そういう人たちがお互いに互いを影響しあって、若しくは自分とひたすら向き合って、映画の最後に向けて前進の一歩を踏み出していくさまは本当に見ていて胸が震えました。

こういう真正面にクサいことを説くものはあまり性にあわないのですが、でも今回できたのは、これが子供のお話だから。
ひたすらに善意が画面を覆い尽くすような場面ってともすれば「偽善的」で「サムい」ものになってしまうのですが、今回は登場人物が子供たち。
そんな純粋無垢な善意を前にして、何も文句を言えるわけがありません。

中でもやっぱりこの映画の中で一番魅力的なキャラクターはマーカスだと思うんですよね。
普段は無口、だからいっつもお調子者のルイスにからかわれて、時には喧嘩に発展することも。
でも、部屋では金魚を飼い大切に育て、ジェイデンの誕生日を祝おうと行動を起こすなど、本当に優しい心の持ち主なんです。
そんな彼が劇中で自分にひどい仕打ちをしたお母さんについてラップするシーンがあるんですよ。このラップがめっちゃいい。

あと、頭をそってもらって「こぶはない?傷はない?」と聞き、きれいになった頭を見て号泣するシーンや、金魚を殺されてしまって自殺未遂を図ってしまうシーンなど、とにかく印象的なドラマが多いキャラクター(反転で読めます)。
最終的に彼がどう落ち着いたのか、あのエピソードも素晴らしいんだよなあ。
彼の素晴らしい演技あってのこの作品だと思います。こいつに一番泣かされました。
なんと「ストレイト・アウタ・コンプトン」(2015)でスヌープ・ドッグ役で出てるらしいです。要チェック。

こんな物語を1時間39分という短い上映時間にテンポよく詰め込んだこの監督の技量も見事。
脚本も彼自身の経験をもとに書かれているみたいです。
一個一個のエピソードに必ずものすごく美しい画があるし(特に一番最後の星条旗のシーン)、ものすごいセンスの持ち主だと思うんですよね。
これ以降作品を作っていないみたいで残念です。

児童虐待のニュースが絶えないこんな世の中だからこそ。
こういう映画を見ないと、これが「絶対悪だ」ということすら忘れてしまいそうな世の中だからこそ。
皆さんに見てほしい映画でした。オススメ!

★★★★☆+α

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Theme: 映画レビュー - Genre: 映画

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