Macklemore & Ryan Lewis / This Unruly Mess I've Made

thisunrulymessivemade.jpg
2nd、2016年、アメリカ
ヒップ・ホップ
AmazoniTunes(Apple Musicあり)
★★★★★

ヒップ・ホップにできること

ラッパーのMacklemoreとプロデューサー・DJのRyan Lewisによるデュオの2枚目。
サイプレス上野とロベルト吉野」みたいな語呂の良さがありますね。

デビューアルバムである「The Heist」(2012)は第56回グラミー賞で「最優秀新人賞」「最優秀ラップ・アルバム賞」を受賞(後者はKendrick Lamar「good kid, m.A.A.d city」を抑えての受賞!)。ですのでそのうち「グラミー賞を聴いてみよう」のコーナーで聴くことになると思います。

さて、このアルバム。非常に良かったです!
白人だからかものすごくラップが聴きとりやすくて、歌詞を見ずに聞いている段階から「リリックがいい!」ととにかく琴線に響きました。
トラックももちろん良いのですが、とにかくリリックがサイコーなんです。

リリックをよく理解できたからか、なんだか日本語のラップを聴いているような感覚で聴けました。
Kendrick Lamarの「To Pimp A Butterfly」ももちろん胸に響いたのですが、英語のリリックでここまでダイレクトに響いてきたのは初めてです。
僕の英語力が上がったのかな・・・?そんなわけはないのですが。

アルバムを通して言うことはこれくらいなので、気に入った曲を1曲1曲紹介していきたいと思います。
気に入ったリリックの和訳とともにどうぞ。

#1"Light Tunnels"

アルバムの一曲目で、リリックの内容はグラミー賞受賞について。
会場の雰囲気やその時の心情が赤裸々に吐露されています。
"And the award goes to... Macklemore and Ryan Lewis!"という実際のアナウンスもサンプリングされているというね。おもしろいです。
いろいろグラミーに対して思うところはあるけれども、もう一度あの場へ。という心情が以下のラインに表れています。
"But wanna make sure I'm invited next year
To the same damn party, celebrities and aisles
Same blank stares, same fake smiles
Same big budget production"
"それでも俺は来年招待されたいんだ
相変わらずのパーティ、セレブ、通路に
相変わらずの白い目に、相変わらずの愛想笑いに
相変わらずの大掛かりなセットにさ"
このアルバムの幕開けにはふさわしい力強い決意の曲です。

#2"Downtown"

ビートがあんまり目立っていないこのアルバムの中で、この曲は唯一ビートがリリックを食ってるといえるでしょう。リリックにあまり中身がないといってしまえばそれまでですが。笑
Mark Ronsonの"Uptown Funk"に対抗したのでしょうか、80’sっぽい妙に底抜けに明るい雰囲気がサイコーの一曲。

#5"Growing Up"

生まれてくるまだ見ぬ愛娘に向けて歌った歌。
ライムの内容はものすごく直接的(赤ちゃんに歌っているのだから当たり前)で、だからこそ聴いている者の感動を誘います。
"They say boys don't cry
But your dad has shed a lot of tears
(中略)
They say girls shouldn't be tough
And moms should raise their kids at home
But baby, I know that that isn't true
Cause your momma's the toughest person I know"
"男の子は泣くもんじゃない、と人は言う
でも君のお父さんはたくさんの涙を流してきた
(中略)
女の子はたくましくなるべきじゃない、と人は言う
母親は家で子供を育ているべきだと
でもね、そんなことはホントじゃない
だって君のお母さんは僕が知ってる中で一番たくましい人だから"
いいですね~。フューチャリングのEd Sheeranもいいですよ。

#6"Kevin"

薬物の過剰摂取によってなくなってしまったKevinというMacklemoreの友達について歌った曲。
#8"Need To Know"でもこの問題について歌われていますが、アメリカで今とても問題になっていることだそうです。
薬局が合法的に処方している様々な薬に依存してしまう患者が増えているというのです。
恥ずかしながらこの曲を聴くまではこの問題については考えたことがありませんでした。
でもここカナダでも大麻が合法なのは医療用のみ(来年に全面的に合法化される見通し)。それでもジャンキーみたいな人がたくさんいるのはやっぱり似たようなことがここカナダでも行われているのでしょう。
合法なだけに効果的な規制が難しいのでしょう。
こんなことで死んでしまう人がいるなんてやりきれない話です。

#13"White Privilege II"

"II"というのは、2005年に彼はソロ名義で"White Privilege"という曲をリリースしているようです。
この曲で彼が切り込んでいるのは、いまだに根深く残る黒人問題。
このトピックで思い出したのはKendrick Lamarの"The Blacker The Berry"
「俺は2015年最大の偽善者だ」という言葉から始まる各バースでは、黒人問題に対する怒りをあらわにするとともに、「でもそんなこと言ってる俺らはどうだ?黒人同士で殺しあってる事実もあるだろう?」と内部からの批判を加えることで彼自身の主張に奥行きを与えています。
このようにただ「黒人に権利を!(Black Lives Matter)」と叫ぶだけではない、という点ではこの曲と共通点があるように思えました。
Macklemoreは白人です。白人である彼がこういう問題のデモ行進に参加すること、こういう問題をラップすること、ひいては黒人の文化であるラップを彼がすること・・・そういうことに対するさまざま苦悩が歌われています。
おそらく彼しか歌うことのできない歌でしょう。
"Hip-hop has always been political, yes
It's the reason why this music connects
So what the fuck has happened to my voice if I stay silent when black people are dying
Then I'm trying to be politically correct?"
"ヒップ・ホップというのはずっと政治的なものだっただろ
だからこそこの音楽で人々は繋がれるんだ
黒人が死んでいっているのに俺が沈黙を貫き「体面」を気にしていたら
俺の声はいったい何のためのものだよ?"
ちょっと意訳ですが。
こういう歌を作ろうと思って実際に形にした彼の勇気をたたえたいと思います。素晴らしい。

ヒップ・ホップってやっぱいいですね~。ということを再確認できた作品でした。
やっぱラッパーは主張してナンボ。

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