スチャダラパー / 5th WHEEL 2 the COACH

5thwheel2thecoach.jpg
5th、1995年、日本
ヒップ・ホップ
AmazoniTunes(Apple Musicあり)
★★★★☆+α

名トラック、そして日常

最近「フリースタイルダンジョン」効果も目覚ましくブームになりつつある日本語ラップ。
なんでも流行りだすと問題になるのが「にわか」問題ですよね。
日本語ラップもバトルだけ見て音源聴かない輩がやっぱり一定数いて、シーンの理想的な活性化からはまだまだ程遠いというのが現状なのではないでしょうか。
この一連のブームが終わったとき、どれくらい多くのファンが残るのかでこの番組の功罪が問われることになると思います。

今回聴いたのはそんな日本語ラップのクラシック中のクラシック。
このブログでも取り上げた川崎大助『日本のロック名盤ベスト100』の中でも取り上げられています。
第35位にランクインしています。本書のレビューから一部抜粋。

収録の人気曲「サマージャム '95」に象徴されるように、ヒップホップ音楽の歌詞が、若い世代の平凡な日常スケッチしたポップ・ソングとして、広く愛されることが可能だった時代の幸福な空気がここに封印されている。
 日本語ラップでラップすることの困難を突破するための発想を、話芸に、特に会話劇のあり方に求めたところに彼らの非凡がある。

とのこと。

アメリカで80年代に生まれたヒップ・ホップは90年代になると新たな世代のラッパーが増え始め、第1世代と区別するために「ニュー・スクール」と呼ばれるようになりました。
攻撃的なギャングスタ的なラップではなく、朗らかな空気感を身にまとっているのが特徴的で、具体的なアーティストとしてはNative TongueDe La SoulA Tribe Called Questなどが有名です。

その「ニュー・スクール」から影響を受けて日本語ラップでその役割を引き受けたのがこのスチャダラパーでした。
とにかく親しみやすいリリックに「かわいい」雰囲気のルックスで当時のサブカルシーンを席巻し、「今夜はブギーバック」の大ヒットも手伝い一気に時代の寵児になりあがり、あのRHYMESTER宇多丸を持ってして「死ぬほど嫉妬した」と言わしめるほどの人気を博しました。
「オールド・スクール」からの影響を色濃く受けたキングギドラの「空からの力」が同じ1995年にリリースされているのも面白いですね。全く正反対とも思えるアプローチをとった2組がねぇ。

キングギドラが「日本語ラップにおける押韻の方法論を確立した」と言われるようにテクニック的な面で一歩先を行っていたのに対し、このスチャダラパーは純粋な「ラップとしてのかっこよさ」としてはやっぱり彼らには劣ります。
でも上の引用にもある通り、「話芸」「会話劇」としての面白さが彼らのラップにはあるのです。

これはどこで読んだのかはたまた聴いたのかは定かではないのですが、彼らはリリックを3人で集まって書いている(いた)ようです。
だからBOSEのバースもANIのバースも3人で合議しているんだそうです。
だからこそのこの絶妙な掛け合いなんでしょうね。#6"サマージャム '95"が名曲たるゆえんはやっぱりこの二人の家計の軽妙さ、これに尽きると思うんですよね。

聴いていてクスリと笑ってしまう、そんな魅力がどの曲にもあってサイコーです。
日常生活の中での「どーしよ」にうだうだ悩んでしまうあの感じを描いた#4"南極物語"、遅刻する人の開き直りを綴った#9"The Late Show"、喜怒哀楽のそれぞれの感情を1バースごとに込めた#10"From 喜怒哀楽"などなど、トピック選びも秀逸。

そしてラップの絶対的なテクニック不足を補うかのようにアルバムを通して冴えわたっているのがSHINCOの手による名ビートの数々。
とにかくどの曲もトラックが素晴らしいですね。サイコーです。
特に#2"B-Boyブンガク"#4"南極物語"がお気に入りです。



面白いラップに至高のトラック。
正直個人的にはラップの中で「押韻」というのがかなり重要なファクターなのでキングギドラの方が好みっちゃ好みですが、この作品・このアーティストが評価されるのもわかるというか。
この二つに関しては好みの問題だと思います。

クラシックにして名盤でした!

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