SALU / Good Morning

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3rd、2016年、日本
ヒップ・ホップ
AmazoniTunes(Apple Musicあり)
★★★★★

「セルアウト」で色鮮やかな世界へ

才能を認められまくっているラッパー、SALU。
彼のことは日本語ラップを聴き始めたころから聴き続けてきたので、ついにリアルタイムで新譜の発売に立ち会うことができてうれしいです。

通算3枚目となるこのアルバムですが、前作「COMEDY」(2014)からは2年という月日が流れています。
この2年間を彼は「長い夜だった」インタビューで語っています。
自分が何をやりたいのかというのをひたすら模索する時間だったようです。

その結果彼が選んだのは「セルアウト」
それは別に売れたいからする、というものではなくて、純粋に音楽性としてポップにポジティヴに、そしていろんな人と音楽を分け合いたい。そういう方向性に動いたという意味でこの作品を自らの「分岐点」であると語っています。

そして実際にこのアルバムを聴いてみて。
またこれは一つ頭抜けたな、と思いました。
特に最近のフリースタイルダンジョン界隈の盛り上がりを見たときに、この人はそことはもう全く別の次元にいるんだなと思いました。
そこに埋もれることなく、しっかりと自分のやりたいことを高いクオリティでカタチにしている。
フリースタイルダンジョンがもてはやされている昨今、ヒップ・ホップにはこういうスタイルもあるのだという「反動」のようにも見えたりして面白いです。

それを象徴しているのが先行シングルとして公開されていた#2"Tomorrowland"

トラックはtofubeatsということで、本当に死ぬほどポップ。
「灰色な日々」から「色鮮やか」な世界への招待状、という曲の内容ともぴったり合致しています。当たり前だけど。
間違いなく今作のハイライトですし彼の新しい代表曲としても聴かれていく素晴らしい曲になっています。
ジャケットの明るい光、タイトルの「Good Morning」が持つ意味が少し見え隠れします。

トラックに少しふれたので、ここでこのアルバムのトラックの話をしましょう。
これまでのようにBACHLOGICとOHLDの二人によるプロデュースではなく、今回はSALU本人がトータルプロデュースを担当し、各曲で異なるゲストが曲をプロデュースしているという作りになっています。
tofubeatsのほかにも水曜日のカンパネラのケンモチヒデフミ、NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのMacka-Chin、そしてスチャダラパーのSHINCOなどなど、とにかく豪華で多彩なゲストを迎えています。

ゲストはトラックメイカー陣にとどまらず、#1"All I Want"にはSalyuが、#9"ビルカゼスイミングスクール"には中島美嘉がボーカルで参加、#4"Mr. Reagan"にはジャズトランぺッターの黒田卓也が参加していて、本当にバラエティ豊富な作品に仕上がっています。

特にSHINCOがプロデュースしている#10"タイムカプセル"は最初聴いたときに「すごくスチャダラっぽいラップだな」と思っていたら本当にSHINCOが参加してたものだからびっくりです。
水カンのケンモチヒデフミが参加している#7"Lily"は今作随一のスピーディなトラックで、それでいて少しメロウな感じのラップがめちゃくちゃかっこいい一曲です。

さて、ここまではトラックやラップの話をしてきたので、リリックの内容についてここから。
一番アツいのはやっぱり#6"Nipponia Nippon"ですかね。

たまに本当に心配だよ日本」という問題提起から始まる一曲。
日本が抱える病理を限りなく話し言葉に近いフロウでラップする彼の言葉は我々の耳、心、胸、脳に直接作用します。
じゃあ何ができる 何も出来ないから何もしないのは絶対に違う」と言い切り、自分のラップの力、声の力を使ってどうしても聴き手の意識を変えたいという切実さが3ヴァース目で爆発しています。
そして「別にひとりで 一人きりで世界を変えられなくたっていい」としつつも、何か小さな一歩が踏み出せるように僕らを後押ししてくれています。これは#2"Tomorrowland"とも通じるメッセージですね。

ほかの曲では歌うようなフロウが主体になっていたりポップな曲調が目立つだけにこの曲や#8"痛いの飛んでいけ -interlude-"のようにがっつりしゃべるようなラップをすると、「言葉の重み」のようなものが浮き彫りになってて興奮します。
この2曲だけじゃなくて一見ハッピーな曲の中にも「何もしない癖に 何かしてる人テレビで見て嘲笑い」「暗い話題か突き抜けた笑い 誰のことも信じられない」のようにドキッとするようなとげのあるリリックが隠れているのが彼の魅力でありすごみだと思います。
本人は「セルアウト」だといっていますが、本当にこういう歌詞の曲が売れるようなことがあればうれしいんですけどね。

アルバム全体の流れも非常にスムーズで、まだ聴き始めて1週間くらいだけどもう20回くらいは通して聴いちゃってます。
とても聴きやすいですよ。日本語ラップの入門編としてもいいかもしれません。


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