葛城事件

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2016年
監督: 赤堀雅秋
出演: 三浦友和、南果歩、新井浩文、若葉達也、田中麗奈ほか
劇場公開中
★★★★☆

他人事には思えない・・・

そこのあなたも、他人事ではないですよ。

<あらすじ>
親が始めた金物屋を引き継いだ葛城清(三浦友和)は、美しい妻との間に2人の息子も生まれ、念願のマイホームを建てた。思い描いた理想の家庭を作れたはずだった。しかし、清の思いの強さは、気づかぬうちに家族を抑圧的に支配するようになる。長男・保(新井浩文)は、幼い頃から従順でよくできた子供だったが、対人関係に悩み、会社からのリストラを誰にも言い出せずにいた。堪え性がなく、アルバイトも長続きしない次男・稔(若葉竜也)は、ことあるごとに清にそれを責められ、理不尽な思いを募らせている。清に言動を抑圧され、思考停止のまま過ごしていた妻・伸子(南果歩)は、ある日、清への不満が爆発してしまい、稔を連れて家出する。そして、迎えた家族の修羅場・・・。葛城家は一気に崩壊へと向かっていく―

この映画のことは全く知らなかったのですが、ヒナタカさんのブログをはじめネット上での口コミがすべからくよかったので見てまいりました。

これまた大傑作でした。「邦画の当たり年」とささやかれる今年ですが、またまたすごい作品が生まれたなという印象です。
ヒメアノ~ル」「クリーピー 偽りの隣人」(残念ながらまだ見てないです)などなど、このような鬱屈した後味サイアクムービーが軒並み高い評価を得ているのがうれしいですね。
日本映画の強みがようやく見つかったのでしょうか。世界でも「日本映画といえばあの感じ」という風潮になっていけばいいですね。

この映画の舞台はある4人家族。
工務店を営む父親、そして子を育てる妻、ちゃんと大学も出て働いていて結婚もしている兄、そして引きこもりでほぼニート状態の弟。
弟・稔は冒頭で死刑宣告を受ける犯罪者。反省するそぶりもなく、ただ傍聴席の父をにらみつけるだけ。

ここまでで描かれている稔は「全然共感できない存在」です。こいつは加害者・悪人だという認識。

しかし、物語が進行していくにつれて家族の実態が明らかになっていって、その絶対的な「加害者・悪人」像というのが揺らぎ始めます。
この4人家族がとにかく人間としてダメで、そのダメがお互いとふれあいの中でどんどん増幅していってしまって無差別殺傷事件を起こしてしまう稔をはじめ、それぞれが壮絶な終局に向かっていくのです。

時代遅れの亭主関白で、妻に手を上げさえもする父親、ニートの稔を甘やかしては夫と対立する母親、父親の言いなりで事なかれ主義の兄、定職にもつかず「一発逆転すっから」と言い引きこもる弟。
若干僕の家族に似ている部分もあって、「ああ・・・」と胸をえぐられる描写も何か所もあって最悪(ほめ言葉)でした。

この物語は対岸の火事ではなく、我々の地続きにある、ある家族の物語
ニュースで何となく流し見していたのが、『実は加害者、こうなんじゃないの?』『この報道の仕方、どうなんだろう』『実は被害者は、こうなんじゃなかったのか』と立ち止まってくれるようになってくれれば、この作品を世に出した意味があったのではないでしょうか

と語る監督は赤堀雅秋氏。劇団「THE SHAMPOO HAT」の主宰で、この物語ももともと舞台でやっていたものを自分で映画化、という形。
監督としての力量も相当なもので、全体的にダークで陰惨な画の力がこの映画をよりパワフルにしています。

演劇的な独特な演出もあったりして。
一番印象的だったシーンが、家出した母親と弟の家に父親が殴り込みに来るシーン。
その直前に兄が家を訪れ、「今すぐに逃げたほうがいい」と説得に来るのですが、母は半ば精神崩壊状態にあり、「お昼ご飯食べていく?」などとまともに取り合わない。
そのあとも「最後の晩餐、何食べたい?」というテーマで和やかな会話が進んでいきます。ここもここで素晴らしいシーン。
ここまではこの小さなアパートに日差しが差し込んでいるような明るい画で撮られています。
そしてそこにやってくる父親。当然ここからは目をそむけたくなるような凄惨な暴力が始まってしまいます。
その過程であんなに明るかった部屋がどんどん暗くなっていって、しまいにはどすどすした真っ黒い画に完全に変わってしまう。
「平和な日常が圧倒的な暴力によって一変していく」というこの映画の根底に流れるテーマが映像として具現化されている素晴らしいシーンだと思いました。

そのテーマでいうと実際に稔が凶行に及ぶ場面も印象的でしたね。
いきなりあのナイフをだす稔。それを目の当たりにしても何もできないというね。

また驚いたのが、これが実際に起こった殺人事件をもとにしている「半実話」だということ。
もちろんその事実は知って見に行ったのですが、「これは脚色だろう」と思っていたことが本当だったりして、後々驚くことがいくつか。
例えばあの獄中結婚。そして兄の自殺なんかも本当だったらしいです。あ、付属池田小学校事件の話です。
ほかにも秋葉原の無差別殺傷事件など多くの実例をもとにしているらしく、それもこの映画の圧倒的リアリティに結びついていると思います。

先日も痛ましい事件が起こったばっかり。
ニュースばっかり見るのもいいけれど、こういう映画も見て考えてみてよ。



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