amazarashi / 世界収束二一一六

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3rd、2016年、日本
ポップ / フォーク
★★★★☆+α

素晴らしい構成で描き切った世界の「収束」とは?

発売と同時にApple Musicでは聴いていたのですが、まだカナダにいたので封入されている小説「花は誰かの死体に咲く」も読めてなかったのでずっとレビューしてなかったのですが最近やっとじっくり聞きこめたのでようやくですがレビュー書きました。
気合の全曲レビュー。
今回は特に構成がものすごくよくできている作品になっているので。

#1”タクシードライバー”
運転手さん、あなたは出会った中で一番の思想家 生活に根差した哲学で疾走する思想家

世の中の不条理を「タクシードライバー」という存在に託して、車の速度そのままに疾走感あふれるメロディーに乗せて歌い上げるオープニングナンバー。
最初と最後に聴こえる(実際のものと思われる)運転手さんの話声が何について話しているのか気になる。たぶん安保理問題。

#2”多数決”

賛成か 反対か 是非を問う 挙手を願う

安保理問題、改憲問題、生前退位問題。さまざまな「問題」に直面し揺れ動いている今の日本を頭に思い描いて作られたであろう一曲。
「もういいよ」と諦念を覗かしているように聞こえるけれど、「白紙から描きなおすには丁度いいかもしれない」と今の世界に対する決別の歌にも聞こえます。

#3”季節は次々死んでいく”

拝啓 忌まわしき過去に告ぐ 絶縁の詩

昨年発売された同名シングル
忘れてしまいたい過去を、それでも背負って生きていこうというラスサビの思想の展開が激エモい曲。
そんなエモさが爆発しているかのような曲調も相まってやっぱり好きな一曲。

#4”分岐”
今振り返ればあの時だ って今がその時なのかもしれない

#2”多数決”のテーマに沿っているようにもとれるし、このアルバムのテーマ「世界収束」に繋がっているという意味で次の#5”百年経ったら”に繋がってるともいえるポエトリーリーディング曲(というかほぼラップだけど)。
今回のアルバムもまたこういう小曲の使い方がうまいです。

#5”百年経ったら”
この町が燃え尽きて 百年経ったら起こして

「世界収束」の一幕が描かれた一曲。
マイナーでフラッシーなメロディが荒廃した世界観とマッチしていて心地よいです。
CメロのSF的転回もステキ。
僕も百年くらい眠りたいです。

#6”ライフイズビューティフル”
あっけなく命や夢が消える星で ありふれた良くある悲しい話
そんなもんに飽きもせずに泣き笑い 人生は美しい

実にamazarashiらしい人生賛歌。
絶望ばかりじゃない。こういう一瞬の「いいな」っていう瞬間があるから人生は美しんだ。
やっぱりこの人に生きることを肯定されると揺さぶられてしまう。名曲。

#7”吐きそうだ”
生きる意味とはなんだ 寝起き一杯のコーヒーくらいのもんか

「生きる意味」という壮大な歌いだしからの「寝起き一杯のコーヒー」という急激な視点の「収束」にハッとさせられる一曲。
#6”ライフイズビューティフル”で思いっきり人生を肯定しておきながら、こういう人生の泥臭い一面を描き切る。素晴らしい構成力ですよね。

#8”しらふ”
老いも若きも酔っ払いの三千世界で 我こそが純粋なる真っ当な素面で

1stフルアルバム「千年幸福論」(2011年)の初回盤付属の小説「しらふ」でも描かれていた「みんなが酔っ払いで、自分だけがしらふなんだ」という思想。
葛城事件」「怒り」と、どこかで生き方を間違えてしまった殺人犯を描いた映画を今年よく見ているからこそ、この思想にはひどく共感してしまいます。
僕も最近人間関係でいろいろ思うところがあって、この思想と共鳴する部分が多くあります。間違ってるのは自分なのか、自分以外全員なのか。考えてしまいます。
ギリギリのところで生きる緊迫感がぎゅっと詰まった焦燥感のあるポエトリーリーディング。このスピードと焦げ付くようなにおいが聴き手を次の曲へといざないます。

#9”スピードと摩擦”

スピードと摩擦 火花を散らして

生きることのスピードを描き切ったまごうことなき名曲。
とにかくワードセンスがえげつないです。「此岸の終わりの夕景」「気管支炎の音符」「吃音的な世の果て」「体内に発射の汽笛」「二月は無垢な難破船」などなど。ハッとさせられる言葉を紡げるってやっぱすごいよなぁ。
ここですさまじいスピードで人生を生き切った主人公は、ついに終幕の時を迎えます。

#10”エンディングテーマ”

僕が死んだら 流れ出すエンドロール 僕が主演の 青春群像

映画好きならぐっときてたまらない一曲。5億点。
ここで再び生きることを肯定されます。これまで以上に力強く。

#11”花は誰かの死体に咲く”
一つ残らず土に還るのだ 花は誰かの死体に咲く

この「死体に咲く花」というモチーフは、「0.」(2009年)収録”つじつま合わせに生まれた僕等”などなど、多くの楽曲やPVで何度も使われてきました。
今回改めて曲や小説(初回盤には同名の小説が封入)になってみて改めて、世界は収束に向かっていっているように思えてきました。
いい方向に向かえばいいのだけれど、そうは思えませんよねぇ。

#12”収束”
コンクリート世紀は知恵の数式 今じゃ遠い日のヒエログリフ

本作を貫くディストピア的SFストーリーが、この小曲で「収束」します。
映像が目に浮かぶような言葉たちがエンドロールのように、または次回予告のように眼前を通り過ぎていきます。
ああ。世界は終わったのだ。

ほれぼれするようなコンセプトアルバムでした。
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