朝井リョウ 『何者』

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新潮社、346ページ
Amazon(Kindle版あり)
★★★★★

喉元にナイフを突きつけられるような、スリリングな小説

久々に小説を読んだ。

<あらすじ>
就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。

いよいよ10月15日に公開される映画『何者』の原作。


桐島、部活辞めるってよ』は映画を最初に見て、のちに小説も読みました。非常に大好きな作品の一つです。
今回も実写映画化されるということで、それならば今回は映画を見る前に原作を読んでみようじゃないかということで読みました。

スラスラ読めてしまい、半ば一気読みといった感じで読み切ることができました。

「就職活動」という大学生活の中でもちょっと「闇」的な存在の部分を描いた作品ということで、来年就活を控えた僕は「就活が嫌になったらどうしよう」とおびえながら読み始めたのですが。

まさかああいった形で怖さを感じるとはね。そしてめちゃくちゃ面白かったです。

まずはネタバレなしで軽く感想を書きたいと思います。

大学生が登場人物でしかも時代設定も現代、という小説を読んだのは多分初めてで、自分が今置かれている大学生活というものが非常にリアルに描写されていくのを読むだけでも結構引き込まれるものがありました。
Twitterのツイートがそのまま小説内に登場するのも新鮮でした。一例を紹介。

RICA KOBAYAKAWA @rika_0927 5分前
みんなといっぱい喋って、いっぱい吸収して、今日も良い一日だったなあ。つくづく思うけど、私はホントに人に恵まれてる。今まで出会った人すべてに感謝。ありがとう、これからもよろしくね。お酒を飲んで真夜中散歩してたら、こんならしくないことを言いたい気分になっちゃった(笑)

非常にリアルですねぇ。

読者は主人公の拓人の目線から友人4人たちの就職活動を中心とした大学生活を「観察」するような立場で物語を体験していきます。
その友人4人も見事なキャラ分けで、「ああ、こういう大学生いるわ」って感じ。乱暴に言えば、世の中の全大学生はこの4人のうちの誰かに似ている部分を探すことができる気がします。

授業を受けるような描写が全然ないのもリアルですよね。
「就活で見られるのは結局学力じゃない」というのを踏まえて書かれているように感じます。
結局は4年間でどれだけ自分と見つめ合ってきたのか、みたいなところなのかな。

今大学生の人は全員読むべきです。
小説としてべらぼうに面白い(その魅力の解説はどうしてもネタバレ込になってしまうので下に書きます)ので、それ以外の人も是非、是非読んでいただきたい。
この魅力がうまく映画になっていればいいんですけど。


以下、ネタバレ込で感想書きます!!


*ネタバレ注意*



この小説の最大のキモ、それはやっぱり最後の最後の大どんでん返しじゃないでしょうか。

物語の間ず~っと、読者は拓人の目線を通じて4人の大学生を「観察」しています。
直接的な信条吐露こそないものの、彼の見たもの・聞いたものを通じて4人の大学生の「イタいところ」が分かってきます。
「イタく」描かれている拓人周辺の人物に対して、拓人、そして読者は「自分はそうではない」という安全圏に置かれているのです。
だからこそ終盤までは「ああ、いるよねこういう大学生」と鼻で笑いながら、それはそれは気軽にそして楽しく読み進めることができるのです。

しかし、最後のあの展開によって、拓人・読者の「安全圏」というものが一気に危ういものとなり、「そういうお前はどうなんだよ」とナイフを突きつけられたようなスリルと直面することになるのです。

僕はまさにずっと拓人に感情移入しながら読み進めていたタチなので、まんまとこのナイフを突きつけられました。
実生活でも僕は拓人と同じようなことをしてしまっているのではないか?と自分の周りに対する態度を顧みる機会にもなりました。

でも、僕は自分が里香のようにカッコ悪くあがくことができるだろうか、と考えた時に「どうだろう」と思ってしまいます。
自分がどこまでも拓人に似ているような気がして、読んだあとはなんだか変な汗をかきました。

自分が「何者」の中に登場するとしたら、どんなキャラクターなのか。
僕はどんな就活をするのか。
考えずにはいられないですね。



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