この世界の片隅に

konosekainokatasumini.jpg
2016年公開
監督
片渕須直(「マイマイ新子と千年の魔法」)
出演(声)
のん(「ホットロード」「海月姫」)
ほか
劇場公開中
★★★★★

「あのとき、あの場所」が「ここ」にある

またしても今年ベスト級はアニメ映画。

<あらすじ>
1944年広島。18歳のすずは、顔も見たことのない若者と結婚し、生まれ育った江波から20キロメートル離れた呉へとやって来る。それまで得意な絵を描いてばかりだった彼女は、一転して一家を支える主婦に。創意工夫を凝らしながら食糧難を乗り越え、毎日の食卓を作り出す。やがて戦争は激しくなり、日本海軍の要となっている呉はアメリカ軍によるすさまじい空襲にさらされ、数多くの軍艦が燃え上がり、町並みも破壊されていく。そんな状況でも懸命に生きていくすずだったが、ついに1945年8月を迎える。


ひっさしぶり(約2か月ぶり)に劇場に足を運び見た映画はこの作品。
公開されるや否や口コミの良さがえぐいことになっていたこの作品です。
一時期Twitterを見れば必ず誰かがこの映画を絶賛しているという状態でした。
ずっとずっと見に行きたかったんですがすごくバタバタしていた時期でこのタイミングでやっと見に行くことができました。
劇場に行く前にネットでチケットを買うほど売り切れを恐れていたのですが、いざ上映が始まると劇場は1/3くらいの入りでなんか拍子抜け。
まあ見たのが二子玉川の109シネマということと、時を経て公開劇場数も増えてきたこともあったのかもしれませんが。

これまた大傑作でした。
今年の邦画はどうしたんだっていうくらい年間ベスト級が相次いでいてすごいんですが、これまた年間ベスト級。
多分今年のベストムービーはホント個人の趣味で変わってくるんじゃないでしょうか。かなり割れそうです。

この映画が戦争の時代を描いたもので、しかも舞台が広島と聞いて「なんだか重そうな映画だなあ」と思ってしまうかもしれませんが、そんな人に一言。
全然そんなことないよ!

むしろ笑える場面が数多くあるし、何より強調したいのがこの物語は決して「戦争の悲惨さ」「戦争を二度と起こさないように」みたいなテーマを中心においているわけではなく、「日常」をこれ以上ないくらいのリアリティで描いた作品であるということ。
もちろん、その「日常」を描いていくことで戦争の悲惨さが滲み出てきたりはするんですが、それはあくまで「地の部分」であり、被写体は主人公・すずがどのように楽しく日常を送っているかということ。

特に食べ物の描写は見事で、あれほど食べ物が貧しい時代で、絶対においしいものは食べていないし、確実に映画見ながら食べているポップコーンの方がおいしいのに、劇中で食べられているご飯がおいしそうで仕方ない。
それはおそらく劇中の家族が戦争のさなかでも工夫や知恵を忘れず、生き生きとしていて、そして何よりも楽しそうに描かれているからだと思います。

この「生き生きさ」「楽しさ」を語るうえで欠かせないのが女優「のん」の存在です。
彼女が連ドラ「あまちゃん」で見せてくれた天真爛漫さ、それはそのまま彼女の魅力であるわけですが、この映画ほど彼女のその魅力を引き出すものはないでしょう。
もちろんパンフレットに書かれている通り彼女もプロの女優ですからいろんなことを考えながら「演じて」はいるのですが、やはり彼女以外ではこの雰囲気は出なかったのではと思う次第。
たらればですが、この映画がもしもクラウドファンディングではなく大規模な予算で作られることになっていて、「海街diary」よろしく役名そのまま広瀬すずがすずさん役として抜擢されていたらどうでしょう。もちろんそれはそれで傑作となった可能性もありますが、「唯一無二」な存在感としてはやはりこののんという選択は素晴らしく映画との親和性という点で5億点差し上げたいくらいの素晴らしい決断だったと思います。

コトリンゴによる劇中音楽にも触れないわけにはいきません。
今年のアニメ映画の音楽と言えば「君の名は。」のRADWIMPSが真っ先に思い浮かびますが、こちらの音楽も負けていません。
新海誠の実に写実的でシャープなタッチのアニメにはRADWIMPSがかっちりはまっていてあれはあれで素晴らしいのですが、今作の水彩画タッチのやわらかいアニメにこのコトリンゴというシンガーの柔らかな歌声がこれまた最高にマッチしていてサイコーすぎる。これまた5億点

そして何より作画ですよ。
今年3大アニメ映画と言えば間違いなく「君の名は。」「聲の形」そしてこの「この世界の片隅に」だと思うんですが、3つが3つ、すべて異なる雰囲気の作品であることにこの日本という国のアニメーションのすごさが表れています。
作品の内容は別として、僕はこの3本の作画すべてに5億点あげたいくらい。
でもこの作品はもうどこか別格で、パンフレットに詳しいことは書いてあるのですが、なにやら通常のアニメーションでは行っていない工程を踏まえているということで、それによってあの独特の「キャラクターがそこにいる感」(絶対的)が生まれているそうです。技術的なことなので読んでもよくわからなかったのは秘密。笑

あとあと、例の「あの場面」での実験的な描き方にはもう息をのむばかりでした。
「ああ、どうか無事でいて・・・」と思いながら画面を食い入るように眺めていしまいました。あそこだけでまたまた5億点ですよ。

僕なんかが語ってももっとすごい人たちが毎日のように鋭い分析や批評を行っているのでいまさら付け足すことはないのです。
とにかくこれを読んでいる時点でまだ劇場に足を運んでいないのならば、簡単に言うと後悔することになりますよ、ということだけお伝えしておきます。

「君の名は。」だけ見てこっちを見てないすべての人に中指を。


音楽・映画・本の感想をほぼ毎日更新中。Feedlyでの購読をお忘れなく! 
follow us in feedly 
↑クリック↑
スポンサーサイト

Comment

Leave a Reply


管理者にだけ表示を許可する