ストレイト・アウタ・コンプトン

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原題:Straight Outta Compton
2015年公開
監督
F・ゲイリー・グレイ(「交渉人」「ミニミニ大作戦」)
出演
ジェイソン・ミッチェル
オシェア・ジャクソン・Jr.
コーリー・ホーキンス
オルディス・ホッジ(「ダイ・ハード3」)
ポール・ジアマッティ(「サイドウェイ」)
ほか
★★★★★

「8Mile」に続くヒップホップの教科書的映画

史実とかぬきにしてめちゃくちゃかっこいい。

<あらすじ>
1986年、カリフォルニアのコンプトン。アメリカ屈指の犯罪多発地域として知られる同地に暮らす、アイス・キューブ、ドクター・ドレーら5人の若者はヒップホップグループN.W.A.を結成する。危険と隣り合わせで、先の見えない毎日を強いられている不満や怒りをビートとリリックに乗せて吐き出す彼らのサウンドは、瞬く間に絶大な人気と支持を集める。しかし、名声を得た彼らに社会からの偏見や仲間の裏切りといった苦難が降り掛かる。


ずっとずっとずっとずっとずっとずっと見たかったこの作品。
見る前からハードルが上がりきってて、どうせ見るなら劇場で見たい、でも公開は終わってる、あ、でも復活上映がある、あ、でも用事があっていけない、いつ見よう、いつ見ようとずっとずっと思い続けていた作品。
でもAmazonプライムビデオで見れることが分かって気がついた時には再生ボタン押してた。思い続けた作品でも決断の時って意外とこんなもんです。恋愛でも一緒でしょ。あれ、違う?

作品のレビューを書いてるものとして使いたくはないけどよく使っちゃうフレーズとして「とにかく見ろ!」というのがあるんですけど。
多分これまでのレビューでもあちこちで「とにかく見ろ」だの「とにかく聞け」だの言ってきたんですけど、次の一言はこれまでとは一段違う重みで言わせていただきます。

とにかく見ろ。

お前がヒップホップ好きかどうかは今問題ではないのだ。今すぐ見るのだ。

史実がどうのこうのという話は僕の知識ではできないのでタマフルのこの映画の特集を聴いていただきたいと思います。

「所詮はアイス・キューブとドクター・ドレーが作った映画」という視点は大切にしたいと思いますが。

この映画で一番考えさせられたのが「表現というのは自由だ」ということ。
N.W.A.にも"Express Yourself"という曲がありますが。


「コンプトンのことなんて誰も興味がない」「ギャングや麻薬のことばかり歌って何になる」「ラップは芸術ではない」。劇中で彼らが繰り返し浴びせられる暴言の数々。
でも結果はどうでしょう。れっきとした事実として、彼らの音楽は多くの人々の心を動かしたではないですか。
どんな逆境にも負けず、必死に自分たちの現実を表現しようとする彼らの姿には涙をこらえきれませんでした。分裂後のディス合戦も含め、それが彼らの現実であり、向き合っていかなきゃいけないカルマだったのです。
そしてイージー・Eの死をきっかけにみんながつながりを取り戻す、というのは少しお話としてできすぎな感じもありますが、まあそこは映画なのでご愛敬って感じで。
ラッシュ / プライドと友情」もそういうところあったから。
要は史実をどう切り取って「物語」を綴るか。伊藤計劃もそういっていました。

もちろんN.W.A.というアーティストがどのようにしてうまれ、そしてどのようにしてゆがんでいったのか。それがこの物語の本筋ではあるのですが、この映画がそれだけではないという点が一つ。
それはこの時代が黒人にとってどんな時代だったのかということ。

"F**k Tha Police"の歌詞にうたわれている通り、当時の警察は黒人を目の敵にして不当な扱いをしていました。
そういった場面がこの映画の中では執拗に描かれます。
そしてメンバーそれぞれが関心を持ってみている、というような描写でロドニー・キング暴行事件の裁判の経過が物語の合間に挟み込まれます。
そしてその暴行を加えていた警官に対しての無罪判決が出るや否や、映画の場面は(これは実際に起こった)ロサンゼルスでの暴動の場面を印象的なスローモーションと報道の音声のコラージュで見せつけます。そして赤と青のバンダナを結び付け警官の前に立つ黒人の極めて印象的な場面でそのシークエンスは終わります。

映画のそれまでの構成で言えば、その事件が彼らの音楽にどのように影響したか("F**c Tha Police"のエピソードのように)、その楽曲のレコーディング風景やらなんやらでお話が進んでいってもいいものですが、ここで画面はブラックアウト。半ばぶっきらぼうに「1993年」と時間が飛びます。
この映画の中で唯一、ここだけが場面と場面がつながりを持っていないのです。宙ぶらりんで観客に提示される。

要するに、これは「終わったこと」ではないのです。
「こういうことがあったから、彼らはこういう歌を歌いました」という昔話では済まされないのです。
「Black Lives Matter」運動がまだもアメリカでは起こっているし、この問題はアメリカではまだまだ根強く残っている。
N.W.A.の音楽は決して昔を懐かしむものではなく、今現在でも血の通った主張なのだという主張がこのつくりによって明らかになっているのです。

そしてそんな逆境の中でも彼らは「Attitude」とともに戦い続けたのです。
差別と、音楽業界のしがらみと、そして世界そのものと。
そんな美しい情熱が凝縮された素晴らしい伝記映画であり、音楽映画であり、ドラマ映画です。

「8Mile」がラップバトル文化を市井に知らしめたように、この映画によってラッパーたちの主張する姿勢というのがどんどんと認知されて行ってほしいものです。
全世界の人々に突き刺さるメッセージをこの映画は、そして彼らの生き様は持っているのです。

ヒップホップに幸あれ。


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