mol53 / ANTITHESIS

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2nd、2016年、日本
ヒップ・ホップ
★★★★★

ディス・イズ・ジャパニーズ・サムライ・ヒップ・ホップ。

2016年、STUTSという素晴らしいMPCプレーヤーが素晴らしいラッパーたちと名盤「pushin'」を作り上げたが、奇しくも同じ年に呼煙魔というもう一人の素晴らしいMPCプレーヤーが、mol53というこれまた素晴らしいMCと名盤「ANTITHESIS」を作り上げた。

mol53というMCについても、呼煙魔というビートメイカーについても、私は多くを知らない。全く恥というものだ。

声を楽器にし、言葉をバチにして叩き出すmol53のラップ。
言葉の響きとその意味が持つ色が一体となって耳に飛び込んでくる。並みのバトルMCのアルバムでは(というかMC一般でも彼ほどの高みに達している人は少ないのだが)味わえない「聴く喜び」に満ち溢れている。

彼のラップは決して「韻が固い」わけではない。
これは今や多くの人に知られてきたことであるが、今や日本語でラップをやる上でのかっこよさは「韻の固さ=何文字踏んでる」というスケールでは計れないものになった。
韻は固さではなく、その配置によって文章を、会話を「ラップ」というアートフォームへと昇華させる。
それは今までの日本語ラップの文法では「フロウ」という範疇で語られていたのだけれど、キングギドラが持ち込んだ「韻観」(それ自体は悪ではなく、ものすごいイノベーションなのだが)に縛られた日本のMC達がないがしろにしてきたものだった。

その観点から見たときに、mol53のラップはそれを高い次元で形にしている。
母音のそのままの響きだけではなく、発声の仕方やアクセントのつけ方でスパイスを加え、「mol53味」としか言いようのないラップになっている。
彼ならではのワードチョイスは言わずもがな。

そんな彼のラップは文字通り呼煙魔のビートに「一体化」している。このシンクロ率はもはや奇跡と呼びたい、そんなレベルの話だ。
スタイルとしては決して最新じゃないけれど、そんなの知っちゃこっちゃない。かっこいいなら文句なし。
サンプリングによってある音楽が全く違う姿に形を変える。呼煙魔はそのヒップホップの魔法をかなり知り尽くしている。
ありきたりな表現だが、「捨て曲」が一つもない。
mol53のラップだけでは、アルバム全体としての統一感・圧倒的な完成度には達しなかったのではないかと思わせるほどに、このmol53のアルバムでは呼煙魔のビートがもつ重みが色濃く反映されている。

SALUAKLOSKY-HIなど、最新のトレンドを日本語に落とし込み、メジャーなグラウンドで戦っている人たちもいるけれど、こういう昔ながらのクソ渋いヒップホップをやる人たちもいなければいけない。
それを受け止める人たちは確実にいるから。

いやー、本当にかっこいいヒップホップアルバムですね。





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