GADORO / 四畳半

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1st、2017年、日本
ヒップ・ホップ




誰にも媚びを売らず、誰彼構わず噛みついていく。
そしていつもギリギリのところでバランスを保っているような危険な雰囲気を持つ男。
ただひたすらにハングリーさをあっぴろげにあらわにしている男を、人は「狂犬」と呼ぶ。
KOK。KING OF KINGS。数々の大会を制した文句なしの「選ばれた勝者の殺し合い」。
全国の数えきれないほどのMCの死体が積み上げられたリング上、その上に最後まで立ち続けた、王の中の王、その名前をGADOROという。
優勝の3日後という奇跡的なタイミングでリリースされた彼の初めてのフルアルバムがこの「四畳半」だ(今でも執拗に彼と比較されるあのチプルソもUMB優勝~アルバムリリースを目論んだものの失敗しているというのは何とも面白い歴史の悪戯である)。

これは去年のKOK。このバトルで勝ち取ったビートも2曲目の"CONCRETE JUNGLE"として収録されている。

彼がこれまでにため込んできた表現欲求を爆発させているような、初期衝動にまみれた粗削りなアルバムである。
その感情に飲み込まれるといつの間にか彼の感情を追体験し、自分も「なにくそ」と立ち上がれるような勇気をくれる。彼の言霊にはそれほどの力がある。
一歩間違えれば「ダサい」の領域に入ってしまいそうな「中二的」なフレーバーが感じられるものの、それをギリギリのところで「詩的」という印象に保っている彼の言語感覚はとても優れているとしか言いようがない。
前半の「攻撃を開始」パートと、後半の「底辺のクズの人生」で、大きく曲のトピックが似通っている印象がありますが、これから彼が人生を歩んでいくうえで表現の幅は広がっていくと思うので楽しみにしたいと思います。
弱点だと思えたのはその点だけですかね。ラップのうまさはもう文句のつけようがない。

これまで実力は認められていた彼だが、「優勝」という二文字からはなぜか見放され続けていた。
チプルソ、R-指定、mol53など多くのライバルが彼の目の前で「優勝」を奪っていった。彼らの多くがすでにバトルの第一線から身を引いているいま、バトルで優勝したところで彼のハングリー精神が満たされるとは到底思えない(財布はだいぶ潤うとは思うが)。
だからこそこのタイミングのアルバムリリースなのである。先のステージに上がってしまったあのライバルに復讐を果たすため。勝ったままにさせないため。負けたままで終わらせないため。この手で首を刈るまで敵を追い続ける。GADOROというのはそういうMCだという気がする。
「全クリ成し遂げたゲームはつまらない」とはこのアルバム収録の"今"からの引用である。すぐに彼がバトルから身を引くとは思わないが、ここで終わるようなMCではないことは確かである。
彼の人生逆転ゲームが、やっと今始まったところだと思いたい。


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