『伊藤計劃トリビュート』

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早川書房、731ページ

<本について>
伊藤計劃が2009年にこの世を去ってから早くも6年。彼が『虐殺器官』『ハーモニー』などで残した鮮烈なヴィジョンは、いまや数多くの作家によって継承・凌駕されようとしている。伊藤計劃と同世代の長谷敏司、藤井太洋から、まさにその影響を受けた20代の新鋭たる柴田勝家、吉上亮まで、8作家による超巨大書き下ろしアンソロジー。

結局伊藤計劃の映画シリーズ見てないなあ。見なきゃ。
日本の若手SF作家による短編集です。伊藤計劃のことはあまり思い出さなくても読めるし、だから逆に全然知らなくても楽しめると思う。
一個ずつ感想書いていきますね。

藤井太洋『公正的戦闘規範』
中国を舞台にしたSFアクション。ドローンやAIを用いた新しい形の戦争を描いた作品。機械による代理戦争ではなく、戦場に人間が居ることが求められるという逆説的な命題が興味深い。

伏見完『仮想(おもかげ)の在処』
仮想世界に生かされている人間の方が、現実世界の人間よりも愛されてしまう・・・という話。全体的に漂う百合の雰囲気と理想主義というか甘々しい雰囲気が『ハーモニー』を強く意識させる。一番伊藤計劃を意識して書かれた作品かもしれない。

柴田勝家『南十字星(クルス・デル・スール)』
戦場で未開拓原住民の研究を担当する文化人類学者が主人公の作品。極限まで「最適化」されたコミュニケーションを描いている。戦場での友情や葛藤を描くという点で『虐殺器官』っぽい。

吉上亮『未明の晩餐』
死刑囚のために最後の晩餐を調理することを生業としている主人公が、捨てられている子供たちを拾い・・・という物語。これは世界観の発想がすごいいい。そしてその世界にしたたかに抗う主人公の姿が美しい。結構お気に入りでした。

仁木稔『にんげんのくに』
プリミティヴな原住民社会の中で生きる「異人」の成長を描いた作品。SFとは逆行している設定に見えて、精神世界の描き方が完全にSFで、一番抽象的な内容になっている。一番読みごたえがあった。

王城夕紀『ノット・ワンダフル・ワールズ』
AppleやGoogleを思わせる大企業に勤める主人公が、秘密を抱える経営者に会うアポを取り・・・という物語。『ハーモニー』的なユートピア感。そんな理想郷が実は・・・という展開がキモ。一番読みやすかった。

伴名練『フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪』
『屍者の帝国』の世界観そのままに、切り裂きジャックは実は・・・という歴史改変もの。やっぱ歴史改変ものはワクワクするなあ~、『屍者たちの帝国』というトリビュートシリーズがあるのですが、そっちに収録されててもおかしくない。

長谷敏司『怠惰の大罪』
「メタルギア」シリーズのノベライズで何作か読んだことのある作家。メキシコの麻薬戦争を、一人の青年が成り上がっていく過程を通じて描き出す。AIが登場するものの、SF色は基本的に薄め。でも一番最後で印象に残ってるっていうのもあるかもしれないけど一番読んでてワクワクしたかな。

『伊藤計劃トリビュート2』も買ってあるので、近いうちに読みたいっすね。


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